(未掲載20160819)「水車を回して、発電してみよう!」滋賀県大津市でやってみました

<お詫び>昨年のイベントですが、旧ブログの調子が悪くて掲載できてないものを、順次掲載していきます。

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「びわこ☆1・2・3キャンプ2016夏」の協賛事業を、8/19(金)大津市南東部の新免地区にある、日本フィンランド学校で開催しました。

日本フィンランド学校は現在休校中。新免地区の高台にあり、田上地域を眺望できる。びわこ☆1・2・3キャンプ実行委員会では、保養キャンプの場として、毎年のように利用。今季は福島県などから、小1から中3まで約50人の子どもたちが生活している。

8月19日、朝から暑い!スタッフは日本フィンランド学校に9時半集合で始まりました。 

今回のスタッフは、関西広域小水力利用推進協議会の会員さん、理事、運営委員と特別協力参加の京都市立伏見工業高校、足立先生と2年生のお二人です。

8時40分頃、足立先生とTさん、Uさんが到着。3人で打合せ後、水路下見へ。
理事の竹尾さんのちゃりピコ水車を高学年の活動に使えるように、羽根を解体する運営委員岸田さん、理事の岡山さん。

京都市の会員、Sさんが大型のキャンピング車で到着。丁寧にとうろうなどを運び込まれました。

初顔あわせでも、意気ぴったりで働かれるEさん、Oさん。

先着のスタッフのみなさんが水路を確認にまわって、汗だくで戻ってこられ、十分な打ち合わせもそこそこに、学校内での活動に備えました。

10:00~10:25 水車発電についてのお話

協議会の竹尾理事が子どもさん相手に、電気の話から。小学校1年生から中学3年生まで、幅広い学年の皆さんを前に、「電気ってどうして起こるの?」の話は、結構、ムツカシイぞ。

おはようございます! 元気に手を挙げて話す子もいます。
高学年の子も、こんなの初めて! という感じ。

もう待ちきれなくて、予定よりも早くグループ分けして、活動準備に移りました。

10:30~11:50 水車をつくろう! とうろう作り:1~4年生の子どもたちとSさん

画用紙や鋏など全部用意してくださったSさんに「この面は貼らないで」と教えてもらう
低学年の子も、実物をなぞれば、ぴったりの大きさにできるんだ!
大きくなったら~~~なんて書こうかな。
滋賀の会員、Kさんも。京都新聞記者は早くから取材活動。
どの面にも子どもたちがそれぞれの思いをこめて、12個のとうろうができあがりました。

タイプのちがうとうろうも4個作りました。協議会安藤理事のお父様が子どもたちのためにあらかじめ木枠を作ってくださいました。職人技のできばえに、これは、しっかり灯さないと。

まず、両面テープをはって・・・
すらすら美しいイラスト描くの、大好き!
おしゃべりしながら、いっぱい描くのよ
中のLED装置は、賛助会員(有)イー・セレクトの社員さんが取りそろえてくださいました

安藤お父様の入念な行燈には、通電して、みんな見ほれてしまいました。これは100V電源です。水車じゃ、こういうワケにはいかない・・・

左から滋賀の会員Hさん、岡山さん、Kさん、実行委員会のKさん、キャンプ全日程参加のYさん

同時進行で、水車の組み立てをしました。ちゃりピコ1台— 5・6年生の子どもたちと竹尾さん。

ネジの種類がいろいろあるんだ。
道具なしでも、どんどん作れる。
子どもたちと竹尾さん。
スパナでしめるHさん、後ろ姿はKさん
できあがった! 手でも回せるし、LED球が点くよっ! 兄弟でキャンプに参加してます。
嘉田修平さんも駆けつけてくれました。

木製らせん水車作りには、中学生が初めて挑戦。足立先生と伏見工業高校2年生のお2人と一緒に組み立てていきました。 

黄色のらせん水車について、まず足立先生が説明してくださり、これは机の下に置いて・・・・
Tさん、Uさんによる、木製らせん水車の作り方の説明。
やすりで削るの、力がいるんだ。

 

足立先生に質問する里中事務局長。
ドリルも使う。作業用手袋を準備しておくべきだった とスタッフ反省。
組み合わせた十文字の木片を、らせん状にねじ止めしていく、ドライバーに初挑戦の子も多く・・・・
ベルトをかけて、発電準備
色とりどりのLED球に、灯がつく具合で、発電状況がわかります。

水車を中心に集合写真を急いでとりました。でも、全員じゃないんだよ。

健康診断に行ってる人もいるので、うつってない子もいます。

12:30~1:15 みんなで昼食

里中さんが、午後から夜のプログラムを説明
南川会長も、子どもさんたちといっしょにいただきます!

昼食後休む間もなく、スタッフは学校から右方向の農道へ水車設置の準備に。先に、地元の方から「ここにはおじいさんが水車をつけてはった所で、もう今はないけど・・・」と勧められていた水路です。

たくさんの水車をどうおくと子どもたちが楽しめるか、ワクワク。

足立先生が、「これはおいしい水や。」とおっしゃったのが、水車の気分のようで楽しかったです。

下見をする時は、遠景を撮るのでなく、水車をおく所の写真を撮るのがポイント。

「水路をみてから、あとで水車を造るのが基本」と教えていただきました。用水路のサイズはそれなりに測ってはいたのですが、甘かったと筆者の反省。

2:00~3:00 水車をまわしてみよう!

玄関で集合し、奈良から参加の運営委員、吉田さんのお話

奈良から手弁当で駆けつけてくださった運営委員の吉田さんから水道水を約1.8m上から流すと、おたましゃもじが水をうけて回りよく発電できると説明。

炎天下でも子どもたちは元気にお寺の横を通って、設置地点に移動。午後の活動には、マイクをもったレポーター役と重いスピーカーを運んでくれる役がふえました。

実行委員会の代表藤本さんは、子どもたちから「おかん」と呼ばれて、みんないっしょに歩きました。農道に車を置いて、みんながわいわい言っている所へ、地元の方が来てくださり、水量はこれでよいか? 車は、ビニールハウス前にとめてもよい、それで夜は、どこで発電するか?など、具合を尋ねてくださいました。本当にお世話になり、ありがとうございました。

みんなで組み立てたちゃりピコ 1台、竹尾さんとこどもたちの動画がアップできてるといいのですが・・・・

昼すぎから、新免の田畑にひく大事な水を、流していただきました。段差のある水路で、樋を動かすと、回り方も点き方も変わります。

らせん水車  2台を高校生コンビで設置されました

一番大型のらせん水車、ますの中に置いて、水の勢いを集めるために、足立先生が 「ゴムを使おう」 とアドバイス。

さん水車  3台が並んで発電しています。動画がうまくアップされますように。

同じSさん水車でも、よくまわるのと、ゆっくりめなのとあって、ふしぎだね。

協議会理事だった奥村さんの設計製作「卓ちゃん3号」(カラフル水車)も設置してみました。農道の両側に あわせて7台の水車が回りました!  

水路にそのまま水車を入れるのではなく、水を「横引き」して少しの落差をつくる考え方。普通の農業用水路にも応用できます。

 

水路が狭くても、樋のかけ具合で、水車がまわります。上流から下流へ、1つの水路で、水を何度も使いながら、発電できます。水車展覧会だ!

3時すぎからおやつタイムで ちょっと一息いれました。

Hさん/Yさん/Tさん/Kさん/足立先生と学生さんお2人は暫時帰路へついていただきました。朝早くから、いろいろな物を準備して、遠路来ていただき、子どもたちといっしょに水車発電をしてくださって、ありがとうございました。

4:15~6:00 発電してみよう!

とうろうを楽しむ場所は、学校から見て左側、池の下の農道地点で、子どもたちが自転車でよく通るところです。

西日を浴びながら、Sさん水車がうまく回り始めました。さっきレポーター役の子が、熱心にみています。下見でしょうか?

 

黄金色の田んぼ、土手の草もきれいに刈っていただいてます。
午前中に作った12個のとうろうが並び、Sさんたちが手順よく配線してくださいました。日暮れが楽しみになってきました。

その下流では、「卓ちゃん3号」をどう設置したらベストか、悩んでいる岡山さん、里中さん。

長靴にはきかえて、卓ちゃん3号の置き方に奮闘している岡山さん

 

樋がちょっと短くて、Sさんのパイプを拝借。夏祭りに使った長~い竹樋を、Y君と学校から運んで来た時には、もう名案ができていました。

 

智慧の出し合い、工夫を重ねて、よっしゃ! 左から 岡山さん、Sさん、Eさん。水も順調です。
安藤さんお父様の職人技、行燈と 「卓ちゃん3号」。

6:30~7:15 みんなで夕食をいただきました

夕立の心配もなさそうで、南川さんもゆったり夕食。

 

京都市左京区の八瀬で、毎年大晦日の参拝者の足元をライトアップしておられるSさんたち。

7:15~7:55 とうろうの灯かりを楽しもう!

夕食もそこそこに、Sさんたちは設置地点に先回りをしていただき、子どもたちはレポーターを中心に、とうろうの灯かりをめざして歩いていきました。

「あっ、見えた!」 遠くからでもよくわかりますね。

 

上流から、Sさんチームの、とうろう12個がずらり。
「もっと、こうすりゃいいじゃん!」
「なかなかの出来じゃないですか」実行委員会の村上さん。
安藤さんイー・セレクトチームとうろう4個が、闇の中できれいにともりました。

この地区の 自治会長さんが、自転車であがってきてくださいました。

 「夕方いっぺん来たときに、見せてもろてますんや。うまいこといきましたな。よかった。うちらも孫と話そうと思うけど、子どもは忙しいし、テレビがよいみたい。私ら子どもの時には、蛍もようけいたし、外で遊んでました。」

いろいろおしゃべりしながら、子どもたちのとうろうのそばを、ずっといっしょに歩いてくださいました。

レポーターにピーピー鳴らないように、スピーカー係さんはずっとがんばりました

8時には水がとまるので、その前に南川会長さんが挨拶をされました。

「みなさんのおかげで、水車発電ができました。ありがとうございます。」

本当にたくさんのみなさんのおかげで、水車をまわして、発電することができました。

ほとんどの人が帰った後から、おじいさんとお孫さんが一組来てくださいました。 「家から見えてましてな。もう終わりですか。水が止まるなら仕方ない。いっぺん降ってもらいたいですな。」
まだ2個だけともっていたのを見ていただきました。
この日のために、この雨の少ない時期、大事な農業用水、ため池の水を流してくださいました、地域の水路管理者の皆様に、お礼申し上げます。
 とうろうの灯が消えたら真っ暗なんですね。

 Sさんたちが手際よく撤収作業してくださるところを、南川会長は車で照らして助けてくださいました。

子どももおとなもみんないっしょに水車をまわして発電し、小さな灯りをみんなで楽しむことができました。たくさんのみなさんのおかげです。

 翌日、新免の畑で働いておられる方にお礼を申し上げたら「京都新聞に載ってましたな。よかったら、またどうぞ。」と喜んでいただけました。ありがとうございます。

 関西広域小水力利用推進協議会の活動に関わらせてもらって本当によかったと痛感しました。

感想文用紙を子どもさんたちに渡し損なって、ごめんなさい。

8月22日、朝8時フィンランド学校を出発し、瀬田駅から子どもたちは家路につきました。

電気のことを考えるおとなの責任は重いです。        (文責:澤田)

 

第6回京都総会報告(20170618)

当協議会の第6回総会を、2017年6月18日(日)京都市しんらん交流会館 大谷ホールで開催し、無事終えることができました。

総会・報告会プログラム

  • 13:30 開会 第6回通常総会

提案された5つの議題はすべて採決されました。議事録は、後日、HP「協議会について」

で公開いたします。

  • 14:40~16:50

○小水力発電関連報告会

  • 京都府の再生可能エネルギーの取り組みについて

~京都府エネルギー政策課さん(自治体会員)

  • 嵐山小水力発電設備修繕の事例紹介と弊社の展望について

~木村化工機株式会社さん(賛助会員)

  • 神戸市六甲川での取り組みについて

~河原一郎さん(個人会員、PVネット兵庫グローバルサービス所属)

  • オーストリア・ツアー報告 ※別ブログ参照してください

~WWS-JAPAN株式会社さん(賛助会員)

○記念講演会

■講演タイトル

『村づくりのエネルギー ~森の恵みで生きる上野村の事例から~」

■講師 奥谷三穂さん

(京都府立大学京都地域未来創造センター COC+特任教授)

(奥谷さん略歴)1983年から2015年3月まで32年間京都府庁に勤務。うち、10年間は環境部署に所属。2015年12月から現職。地域創生の教育を担当。専門は、環境と文化の関わりなど文化政策学。主な著書『環境・文化・未来創造~学生と共に考える未来社会づくり』2013年芙蓉書房出版

群馬県上野村は、日航ジャンボ機墜落の現場となった村です。水田の耕作面積がほとんどないという地域で、人々はどのように地域づくりをしてきたのか、奥谷さんの研究はこれからも続くとのことです。

当協議会では水利用というカテゴリーを基本に、今年からは農林業、バイオマスを含むほかの再エネ、農業用水路などについても関心と学習の範囲を広げていこうとしています。今後の企画についてはまたお知らせしますので、ご参加をお待ちしてします。

◆17:00閉会

閉会後、講師、発表者を囲んで会員、理事スタッフなど、2時間ほど交流会をしました。

 

オーストリアツアー行ってきました(2017/05/11~16)

2012年9月に当協議会が設立した年より毎年、国内版「小水力を訪ねるツアー」を実施してまいりましたが、今年はそうした経過と協議会内での人的スタッフの蓄積を踏まえて、海外ツアーに挑戦してみました。

当協議会賛助会員の中にオーストリア水車メーカーと関わりをもっているメンバーがおり、そのご縁でオーストリア大使館商務部さんのご後援もいただき、参加者9名で5月催行いたしました。

6月18日総会での発表会で、ツアーに協力してくれた賛助会員さんが報告をしてくれたので、そこでのスライドを基本にHPでも公開いたします。

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「オーストリアの小水力を訪ねるツアー」 催行日2017年5月11日(木)~5月16日(火)

   

主催:関西広域小水力利用推進協議会 

後援:オーストリア大使館商務部  

5月11日(木) 関西国際空港発 フランクフルト経由 ウィーン国際空港着便にて出発 (移動時間 約15時間) ウィーン国際空港(同日オーストリア現地時間) そのままホテルのあるウィーン中央駅まで電車移動。

5月12日(金)~5月14日(日) 発電所視察(リンツ、ザルツブルグ、ドイツーオーストリア国境付近)

5月15日(月)ザルツブルグ空港にて解散。関西組はザルツブルグ空港発 フランクフルト経由 関西国際空港着の便で帰国。日本時間5月16日(火) 関空に到着。

○5月12日(金) 見学1日目 (見学した発電所数3か所)

フロリアン(オーストリア第3の都市リンツ近隣)にある水力発電所(ゲート式カプラン水車)

落差 3.5m 流量 1.2㎥/s 出力 30-35kW 稼働開始 2017年予定

ぺルグ(リンツ郊外)にある地域電力配電会社「ペルグ」)の発電所(フランシス水車2基)

フランシス(大) 落差 77m       フランシス(小) 落差 77m

流量 1.9㎥/s             流量 1.00㎥/s

出力 1185kW        出力 625kW  稼働開始年  2010年

WWSWasserkraft 本社

事務所棟でオーストリア水力協会会長のワーグナー氏より、オーストリアの水力発電状況についてレクチャーいただきました。

シュノンベルグミュール(WWS本社近隣)発電所(カプラン水車)

※所有者である製材工場のそばの川から取水

落差 2.4m 流量 10.00㎥/s 出力 195kW 稼働開始年 2016年

製材所に隣接する河川より工場敷地内へ取水

発電したあと、川へ排水します

同じ川の下流で、ワーグナー氏の親族所有の発電所があり、リプレース以前の水車が

モニュメント展示されていました。

5月13日(土)

見学2日目 (見学先発電所数2か所)=ウンターレアハー社

トゥウェングバッハ(ザルツブルグより南に約2時間)にある発電所(クロスフロー水車とフランシス水車)

クロスフロー   フランシス

落差 30m    落差 32.3m

流量 0.6㎥/s       流量 0.75㎥/s

出力 150kW   出力 212kW  稼働開始年 2015年

取水口と取水している河川  

日本と変わらないオーストリアの川   

カニングバッハ1つ目の発電所より約40分)発電所 クロスフロー水車 (2基)

2基とも同じスペック 落差 27.5m 流量 0.85㎥/s 出力 190kW×2

稼働開始年 2016年

取水口、左岸から横取水   

5月14日(日) 見学3日目(見学先発電所数2か所)=クーン社(ドイツ)

スィエツェンハイム(ザルツブルグより約30分)の発電所(らせん水車)

製材所内建屋の間を抜ける水路に設置 

落差 1.67m 流量 2.15㎥/s 出力 32kW 稼働開始日 2008年

タイゼンドルフ村(南ドイツ、ザルツブルグより1時間) 

※村長さんが歓迎レセプションと村の再生可能エネルギーについてレクチャーしてくれました    

地元地域新聞社から取材を受けました  

タイゼンドルフ発電所 (らせん水車)

もとの川は魚道の役目を果たし、右岸の水路から取水口へ

らせん水車建屋前、ドローンから撮影した皆さん

******* ここまで総会でのプレゼンより引用  ******

ここから参加された方より寄せていただいた感想文を抜粋させていただきます。

Kさん(石川県より参加) 今回ツアーに参加させて頂いて、オーストリアでの水力発電所のあり方や事業者の関わり、制度に至るまで理想的なあるべき姿であると感じました。同時に、日本の「発電所をいかに安く効率よく作るかがゴール」という現状とはあまりにもかけ離れすぎているように感じ、今後、どのように私自身が水力発電と、事業者と関わっていけば良いのか考えさせられる機会となりました。答えは出ませんが、このツアーで得た知見や感じたことを、私が関わる人に伝えていくことは怠らず、誰かの意識に届けば良いなと思います。

Nさん(岐阜県より参加) オーストリアのツアーを終えて、帰路の機内で、頭の中を様々な想いが駆けめぐりました。まず、第一に“豊かって何だろう”でした。日本は戦後、私の先輩方の尽力により、物質的な豊かさを手に入れました。拡大という成長を果たすため、社会システムを高度化し「権限の集中による効率化」が有効に機能してきました。また、自分自身もその恩恵の上に今の生活が成り立っています。

現在、予想されていたこととはいえ、その高度化されたシステムのほころびが急速に広がっています。日本が目指してきたことは正しかったのか?間違っていたのか?の答えは一面的な視点や短絡的な議論では出るものではないことは十分承知して上で、考える必要があると今まで以上に強く感じることができました。

過去の歴史や文化的な背景などを深く理解せずに3日や4日、回って感じた表面的なオーストリアやドイツ南部の様子で、これらの国や住民の皆さんの事、日本の現状を比較することは、浅はかなことだとは思いますが、先入観なく、直感で感じた幾つかの視点を挙げてみます。

まず、今回のツアーの目的であった小水力発電やエネルギーの事だと、考え方として、地域の資源は地域のものであり、地域(再生可能エネルギー)が優先されていることが挙げられます。その基本として、メンテナンスは可能な限り自前(発電事業者、個人)で行うことが前提になっています。想像の範疇ですが、水車と発電機のつなぎや増速系(ベルト式と機械式の組み合わせ)も日常メンテナンスの容易さや交換部品の優先度などが明確であり、電源喪失時への対応のシステムも良く考えられている機器が多かったです。

無駄な高度化を排除し、日常メンテナンスや部品交換、更新作業に適した技術(適正技術)は大変参考になりました。

同時に、安易に欧州の製品を価格で判断し、日本へ導入するという危険もあることも考えなければならないと感じました。先に述べた、製品やシステムを総合的に判断し、設計思想も含めて、理解した上での導入を図る必要があります。導入に際しては、何処のメーカーが何が良くて、自分たちの地域や発電所の運営方法などと照らし合わせて最適か?を判断する“目利き”いわゆる真のコンサルタント能力が問われると考えています。

これには、気候や地勢の特徴(地域の特徴)が挙げられます。特に、土木設備を含めたシステムが適切にリンクしていないといけないことがあります。オーストリアは決して降雨量は多くなく(800mm~1,000mm/年)、日本に比べ半分程度です。しかし、好天日数や降雨の元になる地表面や水面からの蒸散を考えると、日本のような集中的な降雨やそれにともなう土砂災害などが少ないのではと想像できます。それに合わせた取水施設の構造や除塵の構造などがあります。ここは注意する視点だと考えています。

帰国して調べると、オーストリアの電力分野の再生可能エネルギーの比率は2/3までとなっており、そのうち小水力発電における比率は10%程度で、その比率は下がる傾向があるとのことです。国全体の電力消費量が増える傾向があることや、開発し尽くされており、新規の開発が少ないことなのかと想像できますが、現在更新が進んでおり、個々の発電所の効率があがっていることから、比率は維持できるのではと考えます。

今一度、豊かさって何だろうの視点で考えてみると、戦後、地域の持つ適正技術に磨きをかけて、地域のエネルギー自立(自治)に尽力してきた結果、当たり前に自分たちの暮らしの基盤となる電気を自分たちで作ってきたオーストリア。成長のために効率化を追求したシステムを構築してきた日本。これからの成熟した社会を本当に目指すなら、日本のものの考え方や個々の技術を誇りに感じつつ、学ぶべきところは、真摯にオーストリアに学ぶ必要があると考えます。

それは、エネルギーに限らず、食、教育、土地利用、農業や畜産業、林業、都市住民の暮らし方など多岐にわたります。しかし、コンビニやショッピングモールやスターバックスやamazonで即日配達は無くてもオーストリアの暮らし方が豊かなんだと感じてしまいます。この劣等感?は何なんでしょうか。

今回のツアーに参加しての雑感です。自分自身で考えて実践してきた「再生可能エネルギー」に対する考え方の方向性の一端をオーストアリアで体感することができました。そのような機会を与えてくださった関係者の皆様、同行いただいた参加者の皆様に感謝し、再訪問への期待を持ちつつ、悶々としたいと思います。ありがとうござました。

Iさん(滋賀県より参加) 今回の研修目的は、私が所属している再エネをテーマとしたグループで市民による水力発電所建設を計画しており、現在、基本設計が終わり、次の工程の際、国外の水車メーカーの実情を学びたい思いと併せて、本業での現在一号機として水力発電を実施したところですが、今後さらに事業を進めるうえにおいて参考になればとの思いで、今回ツアーに意を決し参加させていただきました。結果として最新の小水力発電の実態が学べて大変有意義なものとなり、その他にも通訳さんをはじめスタッフの皆さんの御尽力より研修以外にも楽しい時間が持てたことはこのうえもない喜びとなりました。

Mさん(福井県より参加) ツアーに参加しての一番の収穫は、ヨーロッパ(オーストリア)がとても身近に感じられたことです。今回、関西小水協の方々のご尽力により、安価でツアーに参加することができ、さらに優秀なガイドの方や色々な外国企業の方と触れ合うことができ、ヨーロッパが遠い異国の地ではなく、簡単に行ける土地だということが分かりました。また、多少なりとも人脈ができたので、今後は世界中の良い製品を取り入れていきたいと思います。

Sさん(滋賀県より参加) 初めての国オーストリアで現地研修できる好機を得、常に意欲旺盛な皆さんと、行き届いた通訳のお蔭で、明るく有意義な研修期間を過ごさせていただきました。発電機器・技術の細かな面はさておいて、川の水がどのように利用されているか、不束ながら印象記をまとめました。

1、魚道の確保

第1見学地は土木工事が遅れて稼働してなかったものの、幅90cmほどの長く折れ曲がった魚道が敷設されていました。他の取水現場は、形状こそ様々でしたが、魚道があって、時間をかけて見れば、魚の動きを確かめられたかもしれない。移動中の車窓からも、左岸・右岸と水力発電所の多い所が見え、落差はあっても魚道が確保されているのに感心した。

2、民家の近くでも発電

発電所の建屋に入れば、騒音で説明が聞こえないような所でも、20mと離れず民家があった。木工所横のらせん水車は、材木で蓋をされ、水車の調子よい音が聞こえていた。すぐそばに民家があるけれど、騒音だという苦情はないという。暮らしに必要な音だと捉えられているのかしら?

3、川の物は川へ返す

日本国内で見聞きした小水力発電では、流入物を、誰がどのように処理し、経費はどうか、その対策が現実的な課題となっている。オーストリアでは、取水口の少し上流に、大きな丸太が浮かべられていて、大きな枝などは、そこで遮られ、水嵩が増えた時に下流へ流れる。木の葉などのごみは、水位差を感知して自動的に掬い挙げられるが、第3見学地は昨年新規導入されたそうで、そのごみを真横から噴射水で川へ流してしまうシステムがあり、驚嘆しながら動画を撮った。川の物は川へ返すという法律があるらしいが、「川」を、「山」や「野」に置き換えても同じことがいえ、自然の摂理にかなった暮らし方・文化だからこそ、廃屋なんて一軒も見かけなかったし、落ち着いた美しさが保たれている観光立国なのかもしれないと思った。

Nさん(兵庫県より参加) はじめに本ツアーを企画してくださった関西協議会さんをはじめとする各関係者の皆様に多大なる感謝を申し上げます。ツアー1日目、参加者の何人かの方と名刺交換をしました。おつきあいの関係では言えないことも多々、あるかと思いますが、このような機会であるからこそ聞けた話が多く、非常に自分の為になりました。視野が広がったように思います。

また、水力発電についても、カプラン水車や螺旋水車等を見ることができ、写真で見るものとは全く別物の印象でした。また、その地にあった流量や落差によって色々な水車の導入の仕方があるのも興味深かったです。WWS社では色々な種類、大きさの水車を一つのブロックから削って作っているようでしたが、違う場所があるだけ違う水車があるのだと思いました。水力発電は年間発電量で評価すべきという話もあり、その通りだと思いました。

ツアー3日目に見学した190kWのクロスフロー水車の取水口が、某地区で考えられていた取水口の計画図面とほとんど同じで驚きました。自然のものは自然に返すという考えに基づいた除塵の仕方や大きな魚道はオーストリア独特のものかもしれませんが、感心しました。 本ツアーを終えてよかったと思うことは、第一にオーストリアの水力発電を見てきたということ。第二に日本またはオーストリアでの横のつながりができたことだと思います。本ツアーで学んだことを市内の地域の方と共有し、水力発電の導入につなげていければと強く思います。

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