オーストリアツアー行ってきました(2017/05/11~16)

2012年9月に当協議会が設立した年より毎年、国内版「小水力を訪ねるツアー」を実施してまいりましたが、今年はそうした経過と協議会内での人的スタッフの蓄積を踏まえて、海外ツアーに挑戦してみました。

当協議会賛助会員の中にオーストリア水車メーカーと関わりをもっているメンバーがおり、そのご縁でオーストリア大使館商務部さんのご後援もいただき、参加者9名で5月催行いたしました。

6月18日総会での発表会で、ツアーに協力してくれた賛助会員さんが報告をしてくれたので、そこでのスライドを基本にHPでも公開いたします。

************

「オーストリアの小水力を訪ねるツアー」 催行日2017年5月11日(木)~5月16日(火)

   

主催:関西広域小水力利用推進協議会 

後援:オーストリア大使館商務部  

5月11日(木) 関西国際空港発 フランクフルト経由 ウィーン国際空港着便にて出発 (移動時間 約15時間) ウィーン国際空港(同日オーストリア現地時間) そのままホテルのあるウィーン中央駅まで電車移動。

5月12日(金)~5月14日(日) 発電所視察(リンツ、ザルツブルグ、ドイツーオーストリア国境付近)

5月15日(月)ザルツブルグ空港にて解散。関西組はザルツブルグ空港発 フランクフルト経由 関西国際空港着の便で帰国。日本時間5月16日(火) 関空に到着。

○5月12日(金) 見学1日目 (見学した発電所数3か所)

フロリアン(オーストリア第3の都市リンツ近隣)にある水力発電所(ゲート式カプラン水車)

落差 3.5m 流量 1.2㎥/s 出力 30-35kW 稼働開始 2017年予定

ぺルグ(リンツ郊外)にある地域電力配電会社「ペルグ」)の発電所(フランシス水車2基)

フランシス(大) 落差 77m       フランシス(小) 落差 77m

流量 1.9㎥/s             流量 1.00㎥/s

出力 1185kW        出力 625kW  稼働開始年  2010年

WWSWasserkraft 本社

事務所棟でオーストリア水力協会会長のワーグナー氏より、オーストリアの水力発電状況についてレクチャーいただきました。

シュノンベルグミュール(WWS本社近隣)発電所(カプラン水車)

※所有者である製材工場のそばの川から取水

落差 2.4m 流量 10.00㎥/s 出力 195kW 稼働開始年 2016年

製材所に隣接する河川より工場敷地内へ取水

発電したあと、川へ排水します

同じ川の下流で、ワーグナー氏の親族所有の発電所があり、リプレース以前の水車が

モニュメント展示されていました。

5月13日(土)

見学2日目 (見学先発電所数2か所)=ウンターレアハー社

トゥウェングバッハ(ザルツブルグより南に約2時間)にある発電所(クロスフロー水車とフランシス水車)

クロスフロー   フランシス

落差 30m    落差 32.3m

流量 0.6㎥/s       流量 0.75㎥/s

出力 150kW   出力 212kW  稼働開始年 2015年

取水口と取水している河川  

日本と変わらないオーストリアの川   

カニングバッハ1つ目の発電所より約40分)発電所 クロスフロー水車 (2基)

2基とも同じスペック 落差 27.5m 流量 0.85㎥/s 出力 190kW×2

稼働開始年 2016年

取水口、左岸から横取水   

5月14日(日) 見学3日目(見学先発電所数2か所)=クーン社(ドイツ)

スィエツェンハイム(ザルツブルグより約30分)の発電所(らせん水車)

製材所内建屋の間を抜ける水路に設置 

落差 1.67m 流量 2.15㎥/s 出力 32kW 稼働開始日 2008年

タイゼンドルフ村(南ドイツ、ザルツブルグより1時間) 

※村長さんが歓迎レセプションと村の再生可能エネルギーについてレクチャーしてくれました    

地元地域新聞社から取材を受けました  

タイゼンドルフ発電所 (らせん水車)

もとの川は魚道の役目を果たし、右岸の水路から取水口へ

らせん水車建屋前、ドローンから撮影した皆さん

******* ここまで総会でのプレゼンより引用  ******

ここから参加された方より寄せていただいた感想文を抜粋させていただきます。

Kさん(石川県より参加) 今回ツアーに参加させて頂いて、オーストリアでの水力発電所のあり方や事業者の関わり、制度に至るまで理想的なあるべき姿であると感じました。同時に、日本の「発電所をいかに安く効率よく作るかがゴール」という現状とはあまりにもかけ離れすぎているように感じ、今後、どのように私自身が水力発電と、事業者と関わっていけば良いのか考えさせられる機会となりました。答えは出ませんが、このツアーで得た知見や感じたことを、私が関わる人に伝えていくことは怠らず、誰かの意識に届けば良いなと思います。

Nさん(岐阜県より参加) オーストリアのツアーを終えて、帰路の機内で、頭の中を様々な想いが駆けめぐりました。まず、第一に“豊かって何だろう”でした。日本は戦後、私の先輩方の尽力により、物質的な豊かさを手に入れました。拡大という成長を果たすため、社会システムを高度化し「権限の集中による効率化」が有効に機能してきました。また、自分自身もその恩恵の上に今の生活が成り立っています。

現在、予想されていたこととはいえ、その高度化されたシステムのほころびが急速に広がっています。日本が目指してきたことは正しかったのか?間違っていたのか?の答えは一面的な視点や短絡的な議論では出るものではないことは十分承知して上で、考える必要があると今まで以上に強く感じることができました。

過去の歴史や文化的な背景などを深く理解せずに3日や4日、回って感じた表面的なオーストリアやドイツ南部の様子で、これらの国や住民の皆さんの事、日本の現状を比較することは、浅はかなことだとは思いますが、先入観なく、直感で感じた幾つかの視点を挙げてみます。

まず、今回のツアーの目的であった小水力発電やエネルギーの事だと、考え方として、地域の資源は地域のものであり、地域(再生可能エネルギー)が優先されていることが挙げられます。その基本として、メンテナンスは可能な限り自前(発電事業者、個人)で行うことが前提になっています。想像の範疇ですが、水車と発電機のつなぎや増速系(ベルト式と機械式の組み合わせ)も日常メンテナンスの容易さや交換部品の優先度などが明確であり、電源喪失時への対応のシステムも良く考えられている機器が多かったです。

無駄な高度化を排除し、日常メンテナンスや部品交換、更新作業に適した技術(適正技術)は大変参考になりました。

同時に、安易に欧州の製品を価格で判断し、日本へ導入するという危険もあることも考えなければならないと感じました。先に述べた、製品やシステムを総合的に判断し、設計思想も含めて、理解した上での導入を図る必要があります。導入に際しては、何処のメーカーが何が良くて、自分たちの地域や発電所の運営方法などと照らし合わせて最適か?を判断する“目利き”いわゆる真のコンサルタント能力が問われると考えています。

これには、気候や地勢の特徴(地域の特徴)が挙げられます。特に、土木設備を含めたシステムが適切にリンクしていないといけないことがあります。オーストリアは決して降雨量は多くなく(800mm~1,000mm/年)、日本に比べ半分程度です。しかし、好天日数や降雨の元になる地表面や水面からの蒸散を考えると、日本のような集中的な降雨やそれにともなう土砂災害などが少ないのではと想像できます。それに合わせた取水施設の構造や除塵の構造などがあります。ここは注意する視点だと考えています。

帰国して調べると、オーストリアの電力分野の再生可能エネルギーの比率は2/3までとなっており、そのうち小水力発電における比率は10%程度で、その比率は下がる傾向があるとのことです。国全体の電力消費量が増える傾向があることや、開発し尽くされており、新規の開発が少ないことなのかと想像できますが、現在更新が進んでおり、個々の発電所の効率があがっていることから、比率は維持できるのではと考えます。

今一度、豊かさって何だろうの視点で考えてみると、戦後、地域の持つ適正技術に磨きをかけて、地域のエネルギー自立(自治)に尽力してきた結果、当たり前に自分たちの暮らしの基盤となる電気を自分たちで作ってきたオーストリア。成長のために効率化を追求したシステムを構築してきた日本。これからの成熟した社会を本当に目指すなら、日本のものの考え方や個々の技術を誇りに感じつつ、学ぶべきところは、真摯にオーストリアに学ぶ必要があると考えます。

それは、エネルギーに限らず、食、教育、土地利用、農業や畜産業、林業、都市住民の暮らし方など多岐にわたります。しかし、コンビニやショッピングモールやスターバックスやamazonで即日配達は無くてもオーストリアの暮らし方が豊かなんだと感じてしまいます。この劣等感?は何なんでしょうか。

今回のツアーに参加しての雑感です。自分自身で考えて実践してきた「再生可能エネルギー」に対する考え方の方向性の一端をオーストアリアで体感することができました。そのような機会を与えてくださった関係者の皆様、同行いただいた参加者の皆様に感謝し、再訪問への期待を持ちつつ、悶々としたいと思います。ありがとうござました。

Iさん(滋賀県より参加) 今回の研修目的は、私が所属している再エネをテーマとしたグループで市民による水力発電所建設を計画しており、現在、基本設計が終わり、次の工程の際、国外の水車メーカーの実情を学びたい思いと併せて、本業での現在一号機として水力発電を実施したところですが、今後さらに事業を進めるうえにおいて参考になればとの思いで、今回ツアーに意を決し参加させていただきました。結果として最新の小水力発電の実態が学べて大変有意義なものとなり、その他にも通訳さんをはじめスタッフの皆さんの御尽力より研修以外にも楽しい時間が持てたことはこのうえもない喜びとなりました。

Mさん(福井県より参加) ツアーに参加しての一番の収穫は、ヨーロッパ(オーストリア)がとても身近に感じられたことです。今回、関西小水協の方々のご尽力により、安価でツアーに参加することができ、さらに優秀なガイドの方や色々な外国企業の方と触れ合うことができ、ヨーロッパが遠い異国の地ではなく、簡単に行ける土地だということが分かりました。また、多少なりとも人脈ができたので、今後は世界中の良い製品を取り入れていきたいと思います。

Sさん(滋賀県より参加) 初めての国オーストリアで現地研修できる好機を得、常に意欲旺盛な皆さんと、行き届いた通訳のお蔭で、明るく有意義な研修期間を過ごさせていただきました。発電機器・技術の細かな面はさておいて、川の水がどのように利用されているか、不束ながら印象記をまとめました。

1、魚道の確保

第1見学地は土木工事が遅れて稼働してなかったものの、幅90cmほどの長く折れ曲がった魚道が敷設されていました。他の取水現場は、形状こそ様々でしたが、魚道があって、時間をかけて見れば、魚の動きを確かめられたかもしれない。移動中の車窓からも、左岸・右岸と水力発電所の多い所が見え、落差はあっても魚道が確保されているのに感心した。

2、民家の近くでも発電

発電所の建屋に入れば、騒音で説明が聞こえないような所でも、20mと離れず民家があった。木工所横のらせん水車は、材木で蓋をされ、水車の調子よい音が聞こえていた。すぐそばに民家があるけれど、騒音だという苦情はないという。暮らしに必要な音だと捉えられているのかしら?

3、川の物は川へ返す

日本国内で見聞きした小水力発電では、流入物を、誰がどのように処理し、経費はどうか、その対策が現実的な課題となっている。オーストリアでは、取水口の少し上流に、大きな丸太が浮かべられていて、大きな枝などは、そこで遮られ、水嵩が増えた時に下流へ流れる。木の葉などのごみは、水位差を感知して自動的に掬い挙げられるが、第3見学地は昨年新規導入されたそうで、そのごみを真横から噴射水で川へ流してしまうシステムがあり、驚嘆しながら動画を撮った。川の物は川へ返すという法律があるらしいが、「川」を、「山」や「野」に置き換えても同じことがいえ、自然の摂理にかなった暮らし方・文化だからこそ、廃屋なんて一軒も見かけなかったし、落ち着いた美しさが保たれている観光立国なのかもしれないと思った。

Nさん(兵庫県より参加) はじめに本ツアーを企画してくださった関西協議会さんをはじめとする各関係者の皆様に多大なる感謝を申し上げます。ツアー1日目、参加者の何人かの方と名刺交換をしました。おつきあいの関係では言えないことも多々、あるかと思いますが、このような機会であるからこそ聞けた話が多く、非常に自分の為になりました。視野が広がったように思います。

また、水力発電についても、カプラン水車や螺旋水車等を見ることができ、写真で見るものとは全く別物の印象でした。また、その地にあった流量や落差によって色々な水車の導入の仕方があるのも興味深かったです。WWS社では色々な種類、大きさの水車を一つのブロックから削って作っているようでしたが、違う場所があるだけ違う水車があるのだと思いました。水力発電は年間発電量で評価すべきという話もあり、その通りだと思いました。

ツアー3日目に見学した190kWのクロスフロー水車の取水口が、某地区で考えられていた取水口の計画図面とほとんど同じで驚きました。自然のものは自然に返すという考えに基づいた除塵の仕方や大きな魚道はオーストリア独特のものかもしれませんが、感心しました。 本ツアーを終えてよかったと思うことは、第一にオーストリアの水力発電を見てきたということ。第二に日本またはオーストリアでの横のつながりができたことだと思います。本ツアーで学んだことを市内の地域の方と共有し、水力発電の導入につなげていければと強く思います。

************

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA