第2回オーストリアツアー(6/7-8・後編)

オーストリア訪問の旅もあと2日を残すところとなりました。フォーアールベルク州はスイス、リヒテンシュタインに近いエリアなので「夕食にチーズフォンデュはどうですか?」と、食事の趣向でも、西に来た印象でした。

○6/7(木)  みんなで見学する最後の場所です。会社の名前がはっきりしなかったので後から調べてみました。

林業、伐採、切り出しをしている方の会社   www.agrar-rankweil.at

バイオマスによる地域熱供給会社  www.biomasse-rankweil.at

2つの事業体が機能しあっている会社です

2階をCLT工法で改装した社屋。 木の良さをふんだんに活かしています。

環境に優しい事業として認定されている、証明書が入口に表示してありました。

説明してくれた社長のベーンヘルドさん、持っているのは地下配管の現物

 

 

 

 

 

周辺5km2のエリアを2本の温水供給ラインでカバーしています。

2つある、バイオマスボイラー。大きい方は冬季に稼働。暖かい時期は、小さい方だけ燃やしています

 

 

 

 

 

 

今は休んでいる大きい方のボイラー内部を見せてくれました。上から段々に燃え落ちてくるようです。

稼働中の炉もちょっとだけ。開けると温度が下がりますので。

供給するラインと使う側を区別するインターフェイス機器。この仕組みはちょっと難しいです。

 

 

ご自慢の会議室、木の香りがすがすがしい。自慢したい気持ち、よく分かります。

断熱効果のある2層リペアガラスの窓

 

 

 

 

 

 

 

ベーンヘルトさんの話によると「ランクウェル村の3500haの森林を管理している、所有者は850人の民間人の所有」「1990年に大きな風水害があり7万km2がダメになりぼう大な丸太が余った」「それを見てバイマス利用を思い立った」「入念に森林を調査し70%以上の樹木が古い木だと分かり、今後42年間かけて丁寧に自然更新していけば、山が若くなると分かった」「しかし熱供給を始めた当初は、石油の値段との闘いで大変だった」「しかし、今では”うちにもつないで欲しい”と頼まれるほど。しかし、その時でもしっかりコスト計算をして導入してお客さんがプラスになるか検討する」「初期投資に7~8000ユーロ、月々の使用量など、お客さんに技術的なこともしっかり、分かってもらうまでとことん説明する」「設置後の状態も常に情報公開して質問にいつでも答えられるようにしている」

オーストリアはすでに建設した原発を、1978年、国民投票をして、僅差で「廃棄する、原発はしない」と決めた国です。その時の国民投票の時も、フォーアールベルク州は他州より原発NOの人が多かったと以前、聞きました。なるほど、こうした「とことん分かるまで説明して納得する」という文化の素地が、ここにあるのではないかと思いました。

水力発電も熱供給も技術分野の違いはありますが、メカに弱いシロウトでは、なかなかとっつきにくい構造です。しかし、そこをベーンヘルトさんは「分からない事はいつでも聞いて」「あなたが分かるまで説明します」と、そのていねい誠実な対応がここまで事業を確実にしてきた基本ではないかと拝見しました。

近くでランチをいただいて、午後は自由時間です。と言っても、全員がフェルトキルヒ市へ移動して、ひとまず、市内の観光地メインである旧市街あたりを歩いて、再集合しましょうと、それぞれに一回り。

旧市街に面した商店街のような建物と道ではカフェテラス
丘の上に中世のおもかげたっぷりのお城があります

旧市街のランドマーク、猫の塔。 横断幕は「フェルトキルヒ市お誕生800年のお祝い」 

6/7の当初の予定では、フェルトキルヒ市のシュタットベルケが保有する水力発電所2ヶ所の見学を予定していたのですが、この「お誕生800年」一大イベントのために市の職員の人が対応不能との返事があり、発電所内部や芸術文化センターの見学は諦めざるをえませんでした。旧市街地のすぐそばに1ヶ所、歩いて15分ほどの場所に1ヶ所あると聞いていたので、自由行動の間に行ってみました。

フェルトキルヒの事は、以前、オーストリアを何度か調査訪問している、京都府地球温暖化防止活動推進センターの木原さんから情報をもらっていたことが大変役立ちました。ここからは木原さんのレポートから引用させてもらいます。

「1906年に住民出資で建設されたのが、第1発電所(2300kW)で、市内のそばを流れている川から運河を引いています。

旧市街地に突然出現する運河を利用した、第1発電所
フェルトキルヒ第2発電所
地下建屋の上に巨大な除塵機が

当初は石炭火力も併設して独立系統で運用されていたが、1924年に大きな系統に接続されたのを機に、石炭は不要となった。1992年にオーバーホールして発電機を入れ替え、無人運転となった」

 

 

「第2発電所は2003年、第1発電所へ導水する運河を改修した時に、同時に堰も大規模改造して堰の真下に水車発電機を設置した(4000kW)」

 

 

「もう一つ、第3発電所は2014年、7200kWであるが、ここは遠くて見れません。この3つの水力発電所でフェルトキルヒシュタットベルケは、市内電力の4割弱を賄っていて、送電網も所有している。足りない電力は、フォーアールベルケ州公社から買っている」との事でした。

 

2つの発電所や今回、入れなかった文化芸術センターの前を通ってバス通りに戻りました。市内はシュタットベルケが配信しているフリーWi-Fiの表示がありました。

ここまでが今回のオーストリアツアーの全日程です。この後、午後の自由時間は各自、買い物や夕食にあてて、無事、みんな夜までにホテルに戻っていました。6/8、翌日の朝、荷物をまとめてフェルトキルヒ駅から電車にのり、行きの逆でチューリッヒ空港へ移動しました。

旅の途中、ちょっと熱ぎみの方がおられた程度で、皆さん、ケガ病気もアクシデントもなく、トランジットが長い方もおられましたが、6/9の夜までには日本にもどってきた次第です。

第2回オーストリアの小水力を訪ねるツアーを終えるまで、去年から準備を手伝ってくれた通訳のモニカさん、オーストリア大使館様の後援、賛助会員のWWS-ジャパン、イー・セレクトの皆さんにお礼を申し上げます。

何よりも、1週間という長い時間をツアー参加に確保してくださった参加者の皆さん、ありがとうございました。それぞれのお仕事にこのツアーがうまく役立ちますことを願っております。

来年も3回目ができますように・・・。            (文責:里中)

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