第2回オーストリア小水力ツアー(2018/06/02~09)~ (6/3-5前編)

昨年5月に実施した第1回オーストリア小水力ツアーが好評だったので、今年も1月から準備を進めてきました。昨年同様にオーストリア大使館の後援をいただき、会員と一般参加者、合わせて11名で1週間、オーストリア(一部ドイツ)を訪問してまいりました。

○6/2(土)  すでにドイツに到着している2名、関空以外から出発する1名を除く8名が関空から出たのですが、香港までのフライトの都合で結局、香港空港で3名と合流することに。携帯電話とfb電話を使ってやっと出発ゲートで5人+3人になり、ここで第一関門を突破、ひと安心。

6/2香港空港トランジット

 

 

 

 

 

○6/3(日)  チューリッヒ空港行きに乗り換えて約11時間。関空を6/2の夕方に出発して、スイスに着いたら6/3の朝の6時・・・。時間差を数えることはやめて、とにかくすがすがしい朝です。

まずは予定している電車に乗らないとザルツブルグに着かないので、第二関門の列車の乗り継ぎへ。

何しろ、明日の朝にならないと英語、ドイツ語の通訳をしてくれるモニカさんが不在です。みんなで頑張って間違えないように、ザルツブルグに行き着きましょう。

指定予約した車両に乗り込むべく、でも、その車両が停まるホームの位置が分からなくてウロウロ。長いホームの掲示には4A~4D・Eとか書いてあるけど、(これ、どういう意味?)

6/3朝、チューリッヒ空港駅のホーム

しかも、チケットはモニカさんがネット予約してくれたのを日本でダウンロードしたプリントのみ。結局のところ、空港駅からチューリッヒ駅までは8分ほどしかないので、どれに乗っても良かったらしいのですが、めまぐるしく変わる到着電車の行き先が判別できないので、予定通りの電車を40分ほど待つことに。でも、ここのカフェは、スイスフラン。ユーロしか両替してない人が勇気を出してコーヒーをゲット。何が何だか分からない換算らしかったですけど、ひと休みできました。そして、次の第三関門はインスブルック駅での乗り換えです。

6/3朝、スイスの湖
スイスの湖
車窓から見えた川

 

 

 

 

 

乗り換え時間が5分しかないインスブルック乗り換えで、ちょっとしたトラブル。やっぱり指定車両がどこにあるのかわからへん。ホームを走っている人がいっぱい。(これは何の騒動なんだ?)と、とにかく私達の車両を探している時間が無いので、目の前の車両に乗ったのですが、どうも、そこは1等車らしい。でも私達は2等車。ところが、ものすごく長い車両編成なので、1等から2等に通りぬけ移動できない事が、乗ってから判明! これはマズイ・・・。

なるほど、あの時ホームを走っていた人達は、2等車両がどこにあるか分かっていたからそれを目指していたんですね。

特急ですが、次の駅でホームを走って、律儀に2等車に移動した若い3名。しかし、プリントアウトは私しか持ってないよ。彼らはキップを証明できない事に後から気づいて、ハラハラ。

何しろオーストリアには<駅の改札口>というものが無くて、出入り自由のとってものびやかなシステムです。キップの確認は車内だけ。でも、もしキップを持たずに乗っていたら、全額と罰金を取られるかも知れない仕組み。1等を回っているQBBの赤いネクタイの車掌さんに「別車両に移動したグループメンバーがトラブルになってないか、連絡して欲しい」とお願いしても、「心配ない、大丈夫、ノープロブレム」と1等座席にどっかり座って、手を広げるばかりで、取りつくシマもなし。

しかたないので、Wカップのサッカーチームがインスブルックで合宿しているみたいなどの話をしながら、1等に残ったメンバー5人は、指定席を無視してビュッフェでお茶。そうこう言っているうちに、ザルツブルグ駅に着きました。

駅から荷物が多いのでタクシーに乗り、ひとまずホテルに荷物を置き、みんなでバスに乗ってザルツブルグに市内に出ました。「25番のバス、値段は2.6ユーロ、降りるバス停はここ」と去年のツアーでもサポートしてくれたドイツに住むフィリップさんが、事前に詳しくメールしてくれたおかげで、市内バスを体験できました。

こうして初日の4時間ほどは市内観光の時間がとれました。

ホーエンザルツブルグ城から見た市内
水量が多く濁ったザルツ川

 

 

 

 

 

 

○6/4(月)  今日から小水力発電所めぐりが始まります。初日は、協議会賛助会員(有)イー・セレクトさんが業務提携している、ウンターレアハー社が管理している発電所2ヶ所に行きまました。

※これ以後、本文と、写真/キャプションでお伝えします

ここは2017年にリプレースしたパン屋さんがオーナーの自家消費と余剰売電をしている発電所です。昔、クロスフローを使っていたのを、今は4射タテ軸ペルトンに更新していました。

地下ピットを上から見たところ、フタに「2017」年とあります

 

取り外した古いクロスフロー水車、地下ピットの壁にリプレース工事の時の写真もありました

3つの入口弁はバルブ開け閉めでオン/オフとし、4つ目を独自の技術で微妙な水量調整をしているとのことでした。 案内してくれたのはウンターレアハー社のガブリエルさん。

案内してくれたガブリエルさんとモニカさん
水車の銘板
コントロールパネル画面の一部

 

 

 

 

 

使っている水は800mほど離れた鉄道のトンネルの湧水だということです。ヘッドタンクから発電所、発電所建屋からパン屋さんまで送電するための道路埋設について規制はないのか?と聞くと、「ぜんぜん、何も問題ない」と。ここが日本と違いますね。

このトンネルの湧水が水源だそうで、そこは見ることが出来ませんでした。

ヘッドタンクを点検するオーナーさん

オーナーさんのお店でパンを買って、近くにある村の素敵なレストランへ。モニカさんによると「村のレストランの役目はとても大事」だそうです。地域コミュニティの拠点で、消防団、サッカーチーム、ダンス同好会、あらゆるサークルや村の会合に使われているそうです。

オーストリアを訪問して感じることですが、失礼ながら(こんな小さな村、500人くらいしか住民がいないみたいなのに、どうしてこれほど美味しくて素敵なレストランが、それぞれの村にあるのかしら・・・?)と、ずっと不思議でした。日本ならそうした会合場所は、公民館、自治会所、小学校になるのでしょうが、オーストリアでは、みんなが集まって話し合う場所が<村のレストラン>だそうです。そうした習慣や大人の集まり方からしていろんな「合意形成」のプロセスが違うのかも、と想像しました。

パン屋さん、開店時間は早朝から12時まで
昼間からこのボリューム!! 食べきれない
美味しいスープでした

 

 

 

 

 

 

午後、次の見学先は養魚場の奥にありました。

稚魚といけす、これは昨日食べたマス?

まだ調整中で稼働前の状態でしたが、クロスフロー水車、30kW、落差30m、流量130L/s。

水色が水車、黄色がフライホイール、赤が発電機
木材を周囲にめぐらした建屋、雪対策というより景観重視でしょうか

 

 

 

 

 

今回の訪問先は、できるだけ100kW以下でと要請していました。オーストリアの水車メーカーにとってはもっと大きな規模の発電所を自慢したかったと思いますが、日本でのポテンシャルと考えた場合、50kW程度の規模をオーストリアではどのように設置稼働しているのかを見学したいとお願いしたところ、今回の場所を選んでくれました。

ホテルへの帰り道、世界遺産の村、湖の横を通って1日目を終了しました。

絵葉書のように美しい湖と空、山々

 

 

 

 

 

 

○6/5(火)   今日は午前中はらせん水車、午後はカプラン水車を見る予定です。

(こんな平原のどこに川があるのかしら?)と思いながら車がとまった場所の横に、いきなり水路が。去年もそうでしたが、街の中に引きこまれた水路は民家の間を通り、なかなか外から発見できません。

向こうの奥に見えているのがらせん水車

らせん水車は同じくイー・セレクトさんの業務提携先である、クーン社(ドイツ)が製造、設置したものです。同社のエンジニア、フランツさんが案内してくれました。

 

ここもオーナーがパン屋さんだそうです。やはり粉ひきの歴史が長いのでしょう。昔から水利権を持っている事は大事です。

 

落差1.4m、最大600L/s、7.5kW

ここを管理している男性、大きな声で自慢のらせんを説明してくれた

ここを管理している男性いわく「設置してから13年間、このらせん水車は、何のトラブルもなく動いている。僕は他の再生可能エネルギーも関わって、太陽光もバイオマスも風力も知っているが、水力のらせんが1番だ、素晴らしい!」と。手間がかからない、メンテもちょっとだけ、ベルト交換だって超安いと、お気に入りでした。

 

横に魚道があります
ベルト駆動の増速機、一番消耗するところが見えるのがキモ

 

 

 

 

 

昔はこの木製水車があったことを忘れないようモニュメントで残してあります

 

ここのパン屋さんオーナーは若いカップルで、パンには有機農法の粉を使っているということでした。彼のニコンのカメラでを記念撮影をしました。もしかして、このらせん水車を訪問した初めての日本人が私達かも知れません。

 

管理している男性は「近くで地域熱供給をバイオガスでやっている、見に来ないか」というので、ちょっとだけ見学させてもらいました。

木材を処理する作業
出てくるチップが結構、大きい
バイオガスでエンジンを燃焼させて熱を発生? ちょっと仕組みが分かりません

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2番目のらせん水車は、本当に水量が少なかったです。ここは家族で製材業をしている様子で、昔から製材業の動力に水車があったのを多くの事例のように、発電に切り替えたものの水量が減った時に対応しにくかったので、水路の手前にらせんを設置して自家消費くらいは、というアイデアは、オーナーさんが考えたそうです。

水量が多い時は奥の建屋でもっと発電します
手前水路の左はカプランの取水へ、向こう側川へらせんが設置されている
どこから取水されているか分からないけど、今は水量少ない、多い時は右岸からオーバーフロー
水路から引いた水を回しながら川へ
直流の発電機だそうです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく使ってない様子の除塵機
水量が多い時に稼働するカプラン水車との事です

 

 

 

 

 

 

午後の1つ目は、WWS社が設置した発電所です。当協議会賛助会員WWS-JAPANはその日本法人です。同社のシャラーさん、フェリックスさんが案内してくれました。

まだ新しい建屋、オーバーボールの時は屋根ごとはずすとか

 

 

 

 

 

フランシスみたいですが、横軸カプラン

落差6.3m、流量2.3m3/s、130kW

でも当日は流量が少なくて2kWでしたが、フランシスなら発電しないかも?

取水水路のゲート、指を指しているのがシャラーさん
細かい除塵機の前に、水面のゴミをよけるための木材がななめに渡してある
ここの川からゆるやかに水をひきこんでいました
横に魚道が必ずあります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後にWWS本社の建物に付属している古い発電所をリプレースしている途中の現場を見せてくれました。

後ろの建物がWWS社の工場、この落差で発電してきた

古いフランシス2基のうち1基をカプランに
自然の中に溶け込む水力発電所

 

 

 

 

 

中編(6/6)、後編(6/7~6/8)に続く

(文責:里中)

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