2018/10/13-14 レポート:第7回小水力発電を訪ねる旅~新旧交代さ中の鳥取県を巡る~

今年で7回目を数える小水力発電を訪ねる旅は、2012年第1回目の広島・岡山方面の「続編」とも言える企画となりました。

関西広域小水力利用推進協議会が設立したのは2012年ですが、当時、多くの会員が(小水力発電ってどんなものか、実物を見たことがない・・・)という状態での初めてのツアーでしたが、それから6年後、中国地方の小水力発電所の多くは更新時期を迎えています。

1950年代に建設された発電所も歳を経る事、60年以上。長い寿命を誇る水力発電を更にこの先、維持していけるのかどうか、その過渡期の様子を目に収めておきたいと、2日間、15名の参加者と京都から鳥取県にバスを走らせました。

*************ここから、参加者の古崎さんのレポートです***********

小水力発電施設は適切に維持管理すれば50年、100年と利用可能です。戦後、中国地方では小水力発電所が活発に建設されてきました。 それらが長い歴史を経てリプレースの時期になりました。新たな機械設備と交換することで新たに生まれ変わった、また、生まれ変わろうとする発電所を今回見学させていただきます。

○10/13(土)一日目

京都駅に集合しバスで鳥取県に向かいました。バス内で協議会会長挨拶から始まり、車内で自己紹介を行いました。初参加は私を含め4名で、リピーターのベテランの方が多くいらっしゃいました。小水力を仕事とされている方を始め、今後導入検討に向けて勉強して見たいと考えておられる方、知識のレベルは様々です。移動中もマイクを回しながら意見交流です。先日の北海道停電や九州での太陽光発電の出力制御などタイムリーな話題が続きました。

さて、まず向かったのは南谷発電所です。元々の発電所が60年ほど稼働し、それらをリプレースし再稼働している箇所です。

発電所や取水口へ向かう前にため池前で天神野土地改良区の杉原様にお話を伺いました。なぜ小水力発電を始められたのでしょうか。天神野土地改良区はため池を数点保有されています。その中の一つは農水用の貯水施設として中国地方最大級のものです。農業組合費が高騰化しており、豊富な水資源での発電収益で軽減したいという思いがあったそうです。

水中に設置されたドラム型の無電源除塵機

こちらはユニークな取水で有名ということで楽しみにしていました。ヘッドタンク地点に無動力のドラム型の除塵機が設置されていました。水流の勢いにより除塵機が回り、ゴミを金網にひっかけて上へ流す仕組みになっています。ゴミはオーバーフローとともに流れて行きました。

ある程度水かさが必要なシステムかと思いましたが、年を通じて水量変化の少ない箇所に設置するにはいいアイデアなのではないかと考えました。シンプルな仕組みではありましたが、水路幅が直前に倍ほどに広げられており、水の勢いを弱めるなどの工夫がされていました。

フランシス水車。リプレース前もフランシス水車だったそう

南谷発電所の総工費は2億円であるが、国から50%、県から25%、市から11%合計86%の補助を得たとのこと。リプレース後も出力は以前と変わらず90kW。使用水量を増やしたかったそうだが申請が煩雑であり断念したそう。

 

 

当日はオーバーフローの水路に水が多く流れており、もったいないのでは、使用水量を増やすか、この箇所に螺旋水車を設置すれば良いのではという声が挙がった。

これらの疑問について、「ため池には発電所の導水管を通った水のみ貯蔵される構造になっている。ため池は現在、池掃除のための池干し期間であり、意図的に取水量を減らしている。そのためガイドベーンが普段は自動制御であるが今は手動で調節している。また、たくさんのオーバーフローの水量を発電に使用することも検討したが、新たに手続きが必要であり、設備費用を考えると採算が合わないことが判明したため現状のような発電所となっている」とお話しいただきました。

次の見学先の山守発電所へ移動しました。山守発電所は現在稼働停止しており、リプレース検討中の箇所です。

山守発電所の外観

先ほど訪れた発電所で保全管理メンテナンスを請け負っていたプラントメーカーがリプレースに向けて現在検討中だそう。

一箇所のパワーハウスに二つ水車発電機が設置されていました。別々の河川からそれぞれ取水して、二つの河川の特徴を生かしたおもしろい事例だと感じました。

廃止当初のままで、時が止まったかのような発電所を見学することができて大変興味深かったです。

発電所内。水車発電機。

宿泊先の浜村温泉のホテルへ移動し夕食・懇親会、また二次会が行われ初日が終了致しました。

※ここまで、賛助会員(有)イー・セレクト:古崎さんが担当

 

 

○10/14(日)二日目

快晴の朝、二日目のスタートは鳥取県水素エネルギー推進コンソーシアム「鳥取県、鳥取ガス、積水ハウス、本田技研」が整備、展示システムを運営する「すいそ学びうむ」を見学しました。

09:20、朝一番の見学でした。
「水素って何?」「どうやって作るの?」小学生に戻った気分で。
これぞ燃料電池自動車(FCV)。蓄電能力はEVをしのぐ。

太陽光で水素を「つくり」、「ためた」水素を車で「使う」という流れを、見て、体験できる施設に、参加者の皆さん、予想以上に興奮の様子。

EV・FCVにためた電力を、停電した家に送る、という装置を見て(なるほど、電気は電圧の低い方に流れるからなんだ)と。聞いたり、読んだりよりも、やはり実物です。

場所を県立布施運動公園会議室に移して、鳥取県環境立県推進課、次世代エネルギー推進室の大石さんから、鳥取県の再生可能エネルギー導入の取り組みをレクチャーしてもらいました。

「最初はバイオマスから僕はスタートしました」と気さくな語り口の大石さん

大石さん「鳥取県の電力需要に占める再生可能エネルギー比率は35%、全国比率が15%なので、かなり高いです」

鳥取県は、多種の再生可能エネルギー(バイオマス、水力、太陽光、風力)(温泉熱、地中熱)を実現しており、とてもバランスのとれたエリアであることも実感できました。

 

続いて、「市民エネルギーとっとり」代表の手塚さんから、市民共同発電をつくってきた経過や、発電事業者となった立場から、再生可能エネルギー、小水力発電に寄せる期待を語ってくれました。

手塚さんが作成してくれたスライドは後日、参加者と共有しました

手塚さん「古い小水力発電所の建屋内部を見た時、(これはすごい)って鳥肌が立ちました」とのエピソードを紹介。

小水力男子の皆さんは思わず「うん、うん」。

手塚さん、かなりの小水力女子なんですね。親近感グッときました。

 

「行政+発電事業者+市民・協議会」がこうして一緒の場で懇談できた事は、これまでのツアーになかった事で、新鮮な驚きと出会いができました。

午後は鳥取道、用瀬インターを降りて、別府小水力発電所(別府電化農業協同組合)へ移動。

黄色い壁が新建屋。その左の建物は、旧発電所記念館。

鳥取道と佐治川がクロスするあたりに立地する別府発電所は、1954年に運転開始した古い発電所ですが、2017年にリプレースされました。

取水水量と落差は当時とほとんど同じですが、水車を取り換えたことで旧117kWから134kWにアップしています。

 

一日目に見学した、山守発電所と同じ導水パターン。

別府村の人々も協力して建設した旧別府発電所は、長い間、村の財政を支え、活力の源泉となりました。

独特の導水塔など、旧発電所の記憶を残すために、模型ジオラマを製作して、記念館で展示していました。

 

 

記念館の中には、古い水車、発電機、当時使っていた事務用品、板に墨で書いた当時の記録、関係者の名前、黒電話など、できるだけ残しておきたいという気持ちがこもったものばかり。ここは小水力発電の歴史を知るうえで、将来的にも貴重な場所になるでしょう。

 

発電部長さんの岸本さんが解説してくれました。

 

 

 

新しい建屋内部。1階に電気設備、地下ピットに水車発電機。水車タイプはS型チューブラ。

佐治川への放流口。豪雨、台風の時に川の水位があがってきても、逆流しないようにしてあるが、どうしても擁壁のそばに、砂が溜まるのが今の悩みとの事。

 

 

 

 

 

今回はマイクロバスに15名とコンパクトな人数でしたし、行程が本当に予定通り、時間通りに進んで、お天気も良好、事故もなく無事、京都に戻ることができました。ご協力いただいた参加者の皆様にお礼申し上げます。ツアー終了後、参加者の方から「とっても面白かった」「興味深い場所ばかりで良い体験になった」との声をいただきました。

最後の写真は、一日目に案内、解説してくれた天神野土地改良区の杉原さんが、農業用ため池、大山池の前でお話しているところです。

「天神野の歴史は、ずっと闘いの連続だった」「でも、闘わないと何かを得ることはできない」・・・郷土の先人が歩んできた苦難の歴史を、今、水力と太陽光という再生可能エネルギーを活用して、未来に受け渡そうとする杉原さんの姿と言葉に勇気をいただきました。

今回のツアーでは訪問先の方、鳥取県様、他たくさんの皆さんにお世話になりました、この場を借りてお礼申し上げます、ありがとうございました。来年のツアーができますかどうか、まだ分かりませんが、2019年という年が小水力発電にとって、エポックになる年になるならば、ツアーを続ける意義はありそうです。

その時には、どうぞ皆さん、ご参加をお待ちしています。  (文責:事務局・里中)

 

 

 

 

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