2019/02/23-24 洲本市域学連携事業<洲本市×6大学連携シンポジウム>に行ってきました

関西小水力協議会は2012年9月に出来ましたが、その年の初め頃から小水力に関心のある人達との出会いが少しずつできていました。その流れは設立後も続き、現在も「小水力ってどんなもの?」と思う人達とのつながりを大切にしています。

洲本市、龍谷大学との出会いは、その第一歩と言っていいほど、今に至るまで続く感慨あるものです。

2012年11月に龍谷大学で「再生可能エネルギー塾」という講座が開かれ、そこで出会ったのが、洲本市役所職員の高橋さんでした。高橋さん以外にも、この場からご縁ができた人達がたくさんいますが、今回はそれから7年経過した中で、洲本市さんが6つの大学との連携事業により、大きな成果をあげてきた経過の集大成として「洲本市×6大学連携シンポジウム」を開催されたので、参加してきました。

洲本市文化体育館 文かホールのロビー

23日、三宮から高速バスに乗り、もう行き慣れたという感じの洲本市へ。市役所庁舎が改築されたはずですが、そこは見れないままに、「文化体育館文化ホール」の会場へ。すでに、パネル展示が展開されていて、大学ごとに参加された学生さんが、展示内容を説明していました。

 

 

プログラムの最初は「地域住民×大学生のしゃべり場~なぜ今、ワカモノが洲本市に集うのか」と、11人の方が、趣向を凝らした<しゃべり場>に丸く集まって談義開始。

しゃべり場に集う、学生さんと地域のみなさん

「地域と大学との連携」と言葉にするのは簡単ですが、まず、市内のどこの地区がそうした取り組みに参加してくれるのか、地域住民のニーズが無いと成立しません。洲本市の場合、そこへの働きかけと掘り起しがしっかりしていたのでしょう、4地区の住民の皆さんが大学との活動を交流をスタートしていきました。

基調講演「地域が大学と連携することの価値」牧新太郎氏

しゃべり場で洲本のどの地区の人達が、どの大学とどんな事をしてきたのかを、ざっくり見せてもらった後に、基調講演がありました。

講師の牧新太郎さんは、総務省の地域力創造アドバイザーで、市町村アカデミー副学長ですので、最適なテーマをお話しくださり、二人目の馬袋真紀さんも、朝来市でトライしている人材育成や移住プロジェクトについてプレゼンがありました。

左から、白石さん、竹内さん、牧さん、馬袋さん

お二人の基調講演が終わり、洲本市長の竹内通弘さんやしゃべり場に登場した人達とでシンポジウム。

コーディネイターは、大学との連携の根幹を構成している龍谷大学の白石克孝先生(政策学部政策学科教授)です。

 

今回のしゃべり場でも、シンポジウムでも、スクリーンに発言者の言葉の要約を写し出すのが、とてもユニークでした。それは舞台での発言を聞きながら、下の客席でパソコンをパチバチ打っている人が居るからで、その方がこれまでの取り組みや発言者の顔や気心が全部、分かっているかだろうな、と憶測しました。ろうあ者のためのOHP要約筆記でこうした様子は見たことがありますが、要約の仕方がより気さくで、分かりやすく楽しめました。

想定外の漢字変換に笑いがもれる場面もありましたが、・・・でも、キィ入力している人は大変なんですよ。

 

 

 

 

初日23日の午後プログラムが無事終わって、夕方から会場近くのギャラリー施設の部屋で、参加者交流会がありました。

写真に写っているのは、当日、特別のしつらえでテーブルを大きなお皿に見立てて、洲本産の食材で用意してくれたオードブルで、美味しかったです。

写真中央、マイクを持っているのが、先ほどご紹介した、スクリーン要約入力をしていた、洲本市役所職員の高橋さんです。2012年秋に出会って以後、洲本市で再生可能エネルギー、域学連携を言えば「高橋さん」の名前がすぐ出てくるほど、関西小水力協議会とも親しくしていただいている方です。ギャラリーという不思議な空間で、珍しいお料理と、なつかしい洲本の人達とひと時を過ごしました。

翌日2/24は、域学を実際行っている現場を回るエクスカーション。2012年の秋、龍大で出会った頃、洲本市千草竹原地区という場所で小水力発電が出来ないだろうか、という高橋さん、地域住民の方との熱意で何度か訪問した場所が、今、どんな風になっているのか、楽しみに訪問しました。

ここは、龍谷大学と九州大学が支援している場所で、小さなペルトン水車で発電しています。水量と落差も小さいので安定した発電を維持するのが難しい様子でしたが、地元のベンチャー企業の協力もあって、3kWhのリチウムイオンバッテリーに充電してから、直流で100mの距離をLEDで足元灯をともしたり、防犯カメラの電源にも活用しているとの事です。

できればもう少し、安定性と扱いやすさを希望されていて、あとひと工夫のために、更なる改善する意欲を竹原地区の方達が持っている事、その気持ちが素晴らしいと感じました。

 

次に見たのは、洲本市ご自慢の「龍谷フロートソーラーパーク洲本」です。

満水面積4.8haあるため池に、6300枚のパネルを浮かべたフロート式太陽光発電です。事業主体は「PS洲本㈱」、総事業費7億円、出力1500kW、年間発電量207万kWhで、施工してから2年目に入ってますが、台風被害もなく順調に稼働し、今年から収益の中から、地域活性化事業に寄付することができるという事でした。

 

「龍谷フロート」の方は2017年9月竣工ですが、その少し前に稼働し始めたのが「塔下新池ため池ソーラー」です。

 

こちらは規模が少し小さい(50kW)のですが、ここで得た知識、知見が次のプロジェクトに活かされているようでした。

ともに事業主体であるPS洲本㈱が、売電利益を洲本市と協議しながら、市内の活性化策などに活用することとしています。大学の関与がなければ、地域の資産であるため池から生まれる収益を、地域還元するという事業スキームが、そうそう簡単に出来るようにも思えず、ここまでもってきた、洲本市と龍谷大学、地域住民、信託会社、地元信用金庫とのおりあいのつけ方に、さぞ、関係者は苦労したのだろうと思いました。

 

 

最後に、「ついどはん」という古民家再生プロジェクトを見学しました。築100年を超え、約30年間、空家として放置されてきた古民家を、京都工芸繊維大学の学生さん達が、調査から始め、敷地の良さ、古民家の持つ味わいを活かし、今後も多様な使い方を考慮し、長く活用されるようにリノベーションしたものです。

 

 

「第4回再築大賞、林野庁長官賞」を受賞しただけあって、建物内部も細部も、以前の良さと活かしつつ、現代生活の利便性も取り入れてありました。

 

 

「ついどはん」が完成した後も、米田邸再建や、廃校リノベーションなど、今も取組みが続いています。

 

古いものを新しく再利用する方が、壊すよりもコストも手間もかかります。手をかけた分、昔の人の知恵を知る事ができたりしますが、何よりも、若い人達が現代の技術と知識を持って、新しい発想で古きものを生き返らせることを楽しんでいる姿に、勇気をもらいました。

改装された室内では、他地区の域学プロジェクト会議が開かれていました。

宿泊も可能な古民家にしたい、高校生と淡路島の料理人がウデをふるう食堂もやってみたい、障がい者の方達が働く就労支援作業室にしたり、など、夢がふくらむばかりです。未来への夢を実現するにも、人の熱意を思いを叶えるためにも、再生可能エネルギーから生まれる収益が、健全に地域活性化に貢献する姿を、洲本市がいち早く見せていくことを、これからも期待しながら、見守っていきたいと思います。

関西エリアにおいても、あちこちの市町村が再生可能エネルギーを活かした、街づくりにまい進しています。洲本市は、淡路島の中央に位置し、温暖な気候と近畿と四国を結ぶ流通の要所でもあります。風力発電、太陽光発電に向いていて、残念ながら小水力発電は、水量と落差の条件が見合わないので、事業用では難しいかも知れませんが、竹原地区のように「売るのではない、自分らで使う」という規模なら可能性はあるでしょう。

淡路島全体で、エネルギー自給率は約30%、食糧自給率は約120%と、条件に恵まれた場所ですが、それでも竹内洲本市長さんの言葉は、全国共通だと思います。

「島に住む人間というのは聞く耳を持たない面もある。でも、地域にやって来た若者達を、地区の皆さんらは、自分の子ども、孫だと思って迎えた。なぜなら、住民達は彼らに”本気”を感じたからだ。”本気”を感じたからこそ、地元は心を開いた。」

貴重な言葉だと思います。

洲本市では今後もこの勢いを止めることなく、もっと、もっと、と前に歩いていくでしょう。洲本での取り組みについて詳しく聞きたいと思う方は、洲本市役所の企画課政策調整係新エネ・域学連携担当へお問い合わせください。きっと、高橋さんが一発で、電話に出てくれるでしょう(笑)。                     文責:事務局里中

 

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