3月25日、石川県白山市を会場に開催された高専アイデアコンテストに、わくわくしながら行ってきました。
<前日の部>24日に出立し、白山市の中央を流れる手取川の上流部も観ておこうと、自由で旺盛な研修意欲にもえながら進みました。雪を頂く連山の中でも、白山は本当に白くて美しい。豊富な雪解け水を恵んでもらえる感じです。
堰堤はまだ残雪に覆われて、駐車スペースも積雪のままだったのですが、しばらく停まって手取ダムを遠望。
♪どこかで春が生まれてる~どこかで水が流れ出す~山の3月そよ風吹いて~♪
子どもの頃に歌ったのを思い出す ピッタリの情景でした。
<コンテスト 現場見学の部>
今年は、前回に比べ参加校は5校に減りましたが、オブザーバー参加2団体。ポスター展示では、取組みの経過がまとめられて、参観者から応援メッセージを書き込めるように工夫されていました。
開会行事が簡略に済んだ後、小型バスに分乗して、一番肝心の現地見学に出発!
【第1ポイント 胸かけ衝動水車】金沢工業高等専門学校は、砂防指定された月橋大谷川――――いやぁ ホンマの川でやってはる、すごい! という現場。
学生さんの説明によると、前に現地確認して以降、積雪と雪解け出水があり、昨日来て倒木や流石などが想定外で、胴長でも冷たい水に入って流水を調節した。先に見当をつけた位置に水車を2基設置し、エル字パイプで水を最適の箇所に当てるため、クレーンで宙釣りのものを水を受けながら調整するのが大変だったとのこと。これだけの苦労を実らせて発電できたら、グランプリ! という印象でした。
発電した電力は、a.土壌水分量計測に使い、土砂災害警報につなぐ。 b.白山開山1300年記念のジオラマ―――見学者にとっては少し近づき難い位置にあったのですが、学生さんは「何でも答えますから~」と一生懸命で、さわやかでした。
【第2ポイント 上掛け水車】富山高等専門学校の現場は、砂防工事が完璧に施工された河川で、まず、(失礼な表現でごめんなさい)水に関してなんら苦労のない所だなぁと思ってしまいました。
水車は単なる羽根でなく、小さなバケット状になっていて、水量が少なくても勢いよく回転するように工夫されていて、なるほど高専らしい発想と実力だな と感心しました。
発電をした電力は、市の観光用貸自転車に充電に使用する。レンタサイクルステーションは川のそばの鶴来支所にあり、白山市の自然豊かな地域の観光アピールに、自然エネルギーの自転車で楽しみながら、一層自然への関心を高めてもらうことができる。なかなか解り易いものでした。
【第3ポイント ラセン水車】デンソー試作部の現場は、富山高専のすぐ上流部で、歩いて行けるところです。
ラセンのピッチを変えることにより、よりよく水を受けて効率よく発電につなげる方法を研究し、万一故障した時にも、できるだけ簡便に修理できるよう工夫したこと。カバーをどのように設置すると、水勢を無駄なく利用できるか、研究したこと。ラセン水車の角度については、まだ途中段階であること など説明されました。私は、昨年オーストリアでラセン水車を観てきたことを思い出し、水車の直径や長さに関してはどのように検討されたのか質問したところ、それはしてないとのことでした。
私は、一望して落差が何か所もあり、現場に出入りしやすく、見学者からも見えやすいので、同じラセン水車で比較検討する場合、最もふさわしい場所ではないかと勝手に想像しました。桜が開花したころに、ぼんぼりを灯したりして、夜桜を楽しむのも風情があっていいのでは・・・
発電をした電力は、ボタンをおせば地域情報を伝える表示器「ひかるちゃん」に活用されます。
【第4ポイント 反転羽根式水車】福井工業高等専門学校の学生さんたちが待ち受けていたのは、県立高校グランド横の農業用水路で、水車の音がこぎみよく聞こえてくる現場でした。
縦型の水車で、流れがあれば、落差がなくても置くだけで回転し、発電できる。その秘密は、8枚の可動する羽根で、反転させる軸をどこに付けるとよいか、難しそうな苦労話。また、ごみなどが巻き込まれた時に除去しやすくしておくため、手をいれて作業しやすいようによく考えられていました。水位を高くしてより多くの水を確保するため、2枚の板を両腕を広げたように付設。はめ込みが簡単で、水圧があっても容易に取り外しし易く工夫されていました。水車が流されてしまわないよう、ロープで結わえるというのは簡便な感じです。
発電した電力は、a.農家の方の省力化を図るため、周辺の水位や温度を計測し、在宅で分かるようにすること。b.蓄電をして、災害時の非常用電源に使用すれば、この高等学校が避難所になっている点でも有効だ とのことでした。
フェンス越しには部活動をしている高校生が沢山おられたので、防災の面でも、自然エネルギーという面でも、この高校生と福井高専との交流をされたのか聞いたところ、農家との話し合いで精一杯だったとのことでした。隣県とはいえ限られた時間の準備で大変だったことは推察できましたが、同世代の若者の交歓があったらもっとよかったかな と思いました。
【第5ポイント 胸かけ水車】鳥羽商船高等専門学校は、用水路の中で青空のようなブルーの水車が目をひいていました。水車に水を均等に当てるため、水車と同幅の導水板を用い、想定以上の発電をしていると、満足気な説明でした。
発電した電力は、a.農家の作業負担になっている水量の見回りに寄与するため、田用水の入口と出口に水位計を設置し、WEBで農業者に知らせられるようにする。 b.農機具を使用後、泥を洗浄するのに農家の人は苦労しておられるので、水道蛇口のように立ち上げて、水を汲み上げるポンプに利用する。と、農業者との交流の深さが感じ取れました。
aを示す模型の田んぼで、朝は一旦うまくいったが、故障してしまって と残念そうでした。
【第6ポイント 可搬式並列2段上掛け水車】鈴鹿工業高等専門学校は、用水路での発電は、季節によって水車の撤収も考慮。水車を移動しやすいように、二つに分けた点が、いかにも手作り感があふれ、実用的。意外だったのは、川幅に対し真っ二つに分けるのではなく、水車の幅を大小に分けたこと。
発電した電力は、水田や果樹農家を悩ます害虫対策として、誘蛾灯に利用する。
誘蛾灯をどの高さにすれば虫が集まりやすいか、発電機の位置とも調整をしているとのこと、また、水車の回転軸をうけて、バケットを動かし、水を汲み上げて別の流れにするアイデアは、野菜栽培の水やりの省力化などとともに、遊園地の観覧車のようなおもしろさがありました。
【第7ポイント 下掛け水車】デンソー工業学園は、人家に近い用水路で、落差と杭状の出っ張りがもともとある場所を選択。水車が流されないように留めて置きやすくなっていました。水車は、うまく水を受けて、早く離すことがエネルギーを産むポイント。アルミ製の下掛け水車で、羽根に直接水を当てるための工夫を施したとの説明でしたが、素人には見えにくく、分かりにくいことでした。
水量に合わせて、効率よく発電するために、変速自転車を活用してあり、手動で簡単に変速。「こんなふうに自転車を使うアイデアは、初めて!」と里中さん。
発電した電気は、電光表示板に使われ、50mほど離れた所にある保育園の通園路なので、「卒園と入園おめでとう」と表示されていた。これなら、保護者の皆さんも喜んでくださるだろうし、関心も高まりそうです。子ども向けなら、絵文字もいいかな?
<コンテスト ステージ発表と表彰>
どの高専も、前6回のアイデアコンテストに挑戦したことを活かし、他校の実践に刺激を受けて、今回取組んだ水車つくりの説明や、農作業を少しでも省力化し、サポートするために取組んだことなどを、短時間でてきぱきと発表されました。
金沢高専以外は、落差の少ない所でも発電できるように研究された点が共通しており、評点をつけるのは難しいなと思っていたのですが、休憩時間に、一票投じるチャンスが私らにもやってきました。
表彰は、すべて鳥羽商船が一手に受けられ、おみごとと思う一方、「みんな頑張らはったのになあ」と、無念な気持ちも残りました。高専による小水力発電アイデアコンテストは、今回で終了するそうですが、これまでそれぞれの開催地で最も適した水車と発電機を自作し、近隣の産業や暮らしに活かす実践を若者の手で積み上げられたことが、さらに発展的に交流し合えたらいいのにと思いつつ、会場をでました。
高専のみなさん、すばらしいアイデアを毎回たくさん見せていただいてありがとうございました。 (文責:澤田)