疏水学習会(2017年3月20日)~疏水の歴史を学んで疏水で小水力? 考えてみました

疏水の歴史を学んで、大胆(小水力)シミュレーションしてみませんか?
3月20日、京都市下京区しんらん交流館で、参加者約30名で学習会をしました。

前半は、京都市琵琶湖疏水記念館学芸員久岡道武さんが出前講座をしてくださいました。
タイトル「 京都のまちの電気の灯りを~琵琶湖疏水と水力発電~ 」


スライドを使っての講義、皆さん熱心に耳を傾けておられます。

疏水事業がはじまったのはなぜ?
・京都市民にとってのインフラ施設
・明治16年起工趣意書=水車・舟・かんがい・防火・上下水確保
明治~大正~昭和=琵琶湖疏水は京都の近代化の礎

琵琶湖疏水の建設のあゆみー京都市三大事業
・第一琵琶湖疏水の建設
明治14年 北垣国道が京都府知事就任 琵琶湖疏水計画が始動
明治16年 技師として田邉朔郎が採用され測量はじまる
明治18年 第一疏水工事着手
など  疏水事業の歴史 分線と運河

・水力発電所への挑戦
アメリカ視察(M.21)田邉朔郎、高木文平
第一期蹴上発電所の建設 利用者数 (M.25)740戸⇒(M.30)3678戸
・第二琵琶湖疏水の建設
発電所の増設ー第二蹴上(M.45)・夷川(T.3)・伏見(墨染)(T.3)
・おわりに
第三期蹴上発電所(S.11)
配電統制により関西配電(現・関西電力)に移管(S.17)

少し時間に余裕がありましたので、スタッフ、参加者からの質問タイム。
疏水の取水についての質問、また各所に説明版を設置して欲しいなどの要望の声がありました。
また、伏見辺りの流路での電気事業についての質問や疏水の分水経路についての質問などもありましたが、久岡さん以外の協議会会員によって補足説明があり

「疏水の水は誰のものか?!」
「京都は琵琶湖の”ええ水”を取ってます」
「疏水は河川法+運河法に縛られている?!」
などの意見や見解が飛び出し、後半のワークショップ学習会となりました。

前半の講演後、約10分の休憩タイムをとり、いよいよワークショップ学習会がはじまりました。

「大胆シミュレーション!あの疏水でなぜ小水力発電ができひんの?」
A,B,C 3つのテーブルグループに分かれて討議する前に、まず共通認識のための質疑応答がありました。
会員からの補足説明=奥村さん、宮本さん、板東さん、里中さん


・建築・設計の見地から疏水の成り立ちを解説。勾配、傾斜、取水、瀬田洗堰などについて
・今回、小水力発電の適地として候補になっている場所についての説明。京阪電車が地下に入る以前の疏水はどうなっていた?
・地球にある水(循環している水)は”公水=おおやけの水” である。疏水の水利権は国(行政)が管理を委託されている
・疏水の水利権は河川法に準じていてそのうえ運河法にしばられているのではないか

Aグループ

Bグループ

Cグループ

私はCグループにいたので、そこを少し詳しくレポートします。

Cグループ内容
・ “公水”とは、水はみんなのもの、国はその管理を国民住民から付託されているだけ
・琵琶湖疏水は船の運航、飲用、発電のためにつくられたもの
・使用するための許可をとれば小水力発電できるのではないか。関電だけとかぎられているものではないはず。
・小水力発電の適地候補、夷川発電所から西側にカーブして暗渠からでてきた辺り(塩小路)はどうか?
・毎秒約12トンの水量がある 水車を回すこと可能、人が立てば勢いよく流されるほどの水量
・このあたりは市が再開発すすめているので、鴨東線拡幅、芸大建設などの計画に組み込めるのではないか。京都観光の玄関である京都駅近くという意義。公共性のあるもの。大義名分ある。
・発電機の騒音は周辺住民に対して問題ないか?
・道路拡幅計画もあるのでは? その場合道路の下の暗渠部分に水車を設置することができるか。また、七条と塩小路の間の緑地帯の下に疏水の流れがはいっているのではないか。
・水利権使用については国交省の許可と、京都市、関電などに同意を得る必要がある。
・民間事業者として小水力発電を進めたいが、立ち位置が難しい。地域とうまく手連携したい
・どういう事業体をつくればいいか。公共性の高いものであれば助成金でる場合ある。
・原発から脱却した再生可能エネルギーに民間の力で取り組みたい。
・農業用水を利用した発電の場合、農水省の補助がでるケースもあり。
・行政に頼っていてもできないので、市民・住民の熱意と、民間である程度のプランを作って行政を動かす必要がある。
・先人が滋賀県から大事業のすえ曳いててこられた疏水の水、滔々と流れるこの流れを利用しない手はない。
・参加した京都市会議員さんから「くらし環境委員会」とタッグを組んですすめてはどうか。
・政治とむすびつくと、経済性と効率性ばかり重要視されがちだが、政令指定都市としてのエネルギー政策をアピールできるチャンスととらえたい。子供たち、修学旅行で訪れる学生など、前向きな議論がくりひろげられました。

他グループ内容(抜粋)
運河法第3条の解釈について「運河の効用に妨げなきかぎり~」という文言がある 実際に船 が運航していなくても行政はそういうところをついてくるので対策が必要
・久岡学芸員の話の中に琵琶湖疏水は「近代化産業遺産」であるとあったので、小水力を造るのは難しいのでは?
・三条通り以降の経路では、傾斜がすくないのではないか?
・冬期12月~3月までメンテナンスのため流れが止まるのでその間は発電できない、稼働率が低いだろう
・水利権使用の許可:国土交通省の許可と市・関電などの同意を得ることが必要
・疏水の水は琵琶湖(河川)から取っているので<河川法+運河法>
・発電量によって手続きが違う
1000kW以上 特定水利使用  - 国土交通省大臣
1000kW未満 準特定水利使用 - 近畿整備局長
200kW未満 その他の水利使用 ー 都道府県知事
・FITでの売電は経済産業省に届け出る などなど・・

~まとめのような感想~
★グループによって議論の内容にかなり差異がでてしまいました。市会議員の出席者の多かったCグループでは、実現に向けてのかなり具体的な意見や構想が話し合われました。場所の選定や、京都市の再開発計画にからめた事業として提案してはどうか、など まさに大胆シミュレーションの機会となりました。
★ネガティブな要素も多々確認し合いましたが、大事なのは地域を巻き込んでの熱意と気概。
★関西広域小水力発電利用推進協議会が発足して5年、京都市内での実践・掘り起こし。協議会として、アイディア提出能力を示してはどうか。
★実践にむけてのチームをつくってはどうか。協議会で青写真を作成したい。

感想~琵琶湖疏水は先人がつくった近代化産業遺産であることを知りました。今も滔々と流れて、市民の生活に潤いと豊かさをもたらしています。遺産というからには、そこから次代にむけて、新たなものを産みだしていく必要があるのではないでしょうか。遺物ではなく遺産なのですから、そこから再生可能エネルギーを産生することができれば、先人の遺してくれたものを次代の人へ手渡していく、橋渡しになるのではないでしょうか。それは私たちの世代がしなければならない仕事のひとつなのだと感じています。(個人の感想です)
文責:協議会理事、安藤