富山ツアー(2017/9/30~10/1)行ってきました

今年で第6回目となる「小水力発電を訪ねるツアー」ですが、今回は富山方面に参りました。総勢27名が京都駅に集合して、バス1台で1泊2日、好天に恵まれて今年も好評のうちに終えることができました。

協議会会員はもちろん、一般参加の方、小水力発電所は初めて見るという方もおられて見学先こそ厳選したので多くはありませんでしたが、充実した2日間でした。

行きのバスの中で、参加者が得意分野のレクチャー。いきなりの無茶ぶりでも皆さん、熱心に話してくださいました。

参加者の方4名から体験感想文をいただきましたので、ブログに掲載いたします。
ご協力の皆様方、ありがとうございました。

***********<第1日目、9/30、京都駅~五箇山集落、南砺市小瀬谷発電所へ>

(ここから、宍粟市から参加の野場さん)9月30日(土)、世界遺産である五箇山で休憩した後、富山県南砺市にある小瀬小水力発電所(160kW)を見学に行きました。この発電所は、地域の方が地域の重要建築物を守るために造られた住民主体の発電所ということで、非常に興味がありました。

世界遺産、五箇山集落の一つの合掌造り民家
小瀬谷発電所事業主の一人である地元酒蔵オーナーさんのお店、日本酒と地元のおみやげがたくさん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まずは、取水地点を見学しました。ここではチロリアン取水という取水方式が採られ、漁業権がないため全量取水とのことですが、湧水が多いのか減水区間にも水が流れており、自然豊かな場所だと感じました。

 

 

 

 

 

チロリアン取水について私は詳しくありませんでしたが、現場を見てみると、砂防堰堤の越流部の河床にメッシュ状の網があり、そこから水を取るような取水方式でした。メッシュ状の網は落葉等を通さないので、取水と除塵を合わせて行えるのはメリットなのかなと思います。ちなみにチロリアン取水の名前の由来は、オーストリアのチロル州だそうです。チロル州は山岳地帯で落石などの影響で河川内の地形変化が多いらしく、この取水方式が採られているそうです。

 

 

 

 

 

次に、発電所建屋を見学しました。豪雪地帯特有の雪囲いが印象的で、上坂さんやツアー参加者の皆さんから、技術的な話も含めて色々なお話をお聞きすることができました。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後に、小瀬発電所の管理をされている羽馬さんの自宅を訪ねました。

羽馬さんの自宅からは、パソコンやタブレットを通して取水地点や発電の様子を監視できるようになっており、自宅で一日中監視可能な点を考えると、羽馬さんは本当に好きでされているのだと感じました。現状は当初予定していた発電量よりも多くの発電をしているようで、ひと月に3~4件の視察依頼があるそうです。また、近い内に取水地点のゲートの遠隔操作をするための工事をするらしく、今後が楽しみです。

モニター画面を前に説明する羽馬さん、古い合掌造りの居間にはいろりがありました

小瀬小水力発電所のような住民主体の発電所は全国でもまだまだ少ないと思いますが、地域の水で地域を守るというコンセプトに魅力を感じますし、今後も全国でこういった発電所が増えていくのではないかと思います。

*****<第1日目9/30夜、富山県協議会の上坂会長のレクチャー富山協議会メンバーと交流しました

富山の小水力発電、全体のついてのレクチャー

 

富山県協議会事務局メンバーがお二人、交流してくれました

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***********<第2日目、10/1、土遊野、常西公園>

(ここから、京都市から参加の松本さん)「自然と人を水車のように回す人がいた」

 バスの中で自己紹介が始まった。なんと多彩で有能な人たちの集まりなんだと感心する。そんなメンバーのツアー、好奇心だけで何ら知識がない私にとって贅沢な「仲間たち」だ。きっと収穫は多いだろうなとウキウキ。

今回のフィルドワークで、特に関心があったのが、「土遊野」だ。わずか1軒だけの「限界集落」で小水力発電が大活躍しているという。

小型バスが入れずマイクロバスに乗り換えてその「村」へ向かう。思ったよりは道幅はある。元気な笑顔で迎えてくれたのは、「土遊野農場」を営む橋本順子さんだ。

土遊野を語り出したら止まらない、すべてを伝えたい橋本さん。
橋本さんへインタビュー、スピーカーを持ってくれているのが上坂さん

敷地の奥のほうにある水車がたくましく回っている。まるで、彼女のパワーを映したように意気軒高と―見かけよりは発電量は少ないかもしれない。が、水しぶきをあげながら(これは水漏れしているから技術屋的には本当はよくないらしい)回る水車の姿は、静かなたたずまいの「寒村」に活気を醸し出している。それは、数字化されない心の充電と言えるのではないのか。

その水車の上方でもノズルから噴き出す水流を利用して羽が回り、それは水車よりはるかに多くの電力を生み出していた。そこでいったん働いた水がさらに水車でもうひと働きするという二重のシステムだ。これを考えたヤツは抜け目がないというかずるがしこいと思った。

ターゴ水車で1度発電した水を、上掛け水車に運んで、2度おいしい発電

 その二つの水車へは400メートル先の堰堤から塩ビ管を通って水が運ばれてくる。が、L字型に曲がっている箇所が2か所ほどあり、そこに水圧がかかるのだろう、1か所からは水が漏れていた。

 

 

 

時間がなくて取水口の堰堤へは行けなかったが、取水は、浸透取水方式というやつで、ヒダのある取水装置の上に砂利を被せるやり方で、常時ごみ取りをする必要がなく、電源開始から現在まで一度もごみによる目詰まりはないという。ここにも技術が光っていた。

 

母屋の隣にある建物にはパンを焼く窯があった。阪神大震災の時避難してきたパン職人の希望で電気窯にしたという。焼き立てのパンはそこにはなかったが、一度食してみたいと思った。震災避難者を受け入れ釜まで作るたった1軒の「限界集落」、「限界」っていったい何なんだろうか。

水車のさらに奥の敷地では家屋が新築されていた。聞くと、娘夫婦が住むという。なんでも、みんなでワイワイバーべキュウがしたいからとか??なんか楽しそうだ。

大活躍し、生活の弾みをつけている小水力発電。どうやらそれはただの偶然ではなさそうだ。都会生活の「限界」を感じ、草刈り十字軍の縁でこの家へ移住した橋本さん、自然巡回循環型の自給自足の生活を実践し、そのための自給電力を思考。それがあるからこその熱い思いを持つ小水力関係機関者との出会い。そして実証へ。

たった1軒となった「限界集落」が故の好条件は一つの成功の理由に数えられるのかもしれない。しかし、今回強く感じたのは、そうした条件を有効化し形にしていく「人」の存在だった。陽気でしたたかで優しさに満ちた「肝っ玉母さん」、彼女の存在がなければ、ここに水車は回っていなかった。

土遊野からの寄り道、小さならせん水車「ピコピカ」を上手に設置してました。一番身近かに発電できるかも、と皆さん、けっこう興奮ぎみ。

(ここから、京都市から参加の山下さん)今回、初めて小水力発電のツアーに参加させていただきました。小水力発電については、浅い知識しかなかったため、この2日間は勉強になることばかりでした。その中で私が魅力を感じたのは土遊野です。2日目の朝、富山県の土遊野という場所へ訪問させていただきました。

土遊野では、小水力発電とともに太陽光発電も行っており、エネルギー自立を目指す取り組みがされていました。そこで、私が興味をもったものは小水力発電システムの2段階構造です。まず、第1段目の発電では、水の勢いを利用した水車発電機であるターゴインパルス水車で、有効落差11.1m、流量20リットル/秒で約1kwの発電を行います。次に、第2段目の発電では位置エネルギーを利用した水車発電機である上掛け水車で、直径(落差)4m、流量20リットル/秒で、約400Wの発電を行います。水のエネルギーを違う形で、2段階利用しているということに驚きました。また、水車といっても様々な形があるということがわかりました。

上掛け水車
水車が発電した電気をここのバッテリーで貯めておきます

このツアーを通じで、小水力発電について学ぶことができただけでなく、エネルギー自立を目指す方々から貴重なお話をお聞きすることもでき、とても充実した2日間を過ごすことができました。

***********<第2日目10/1午後、富山市常西公園、常願寺川沿いへ>

(ここから、岡山県から参加の後藤さん)前日に見学した小瀬谷では、昔ながらの住民が主体となって160kWの小水力発電所を作り、その電気を売って合掌造りの集落を守っていこうとしていた。そして、午前中に見学した土遊野では、自然の恵みを活かして生活する住民が主体となって1.4kWの小水力発電を作り、その電気を使って自給自足の生活を営んでいた。

一方、今回最後に見学する小水力発電所は、地方自治体の富山市が主体となって作ったものだ。川にあるように見えるが、本流の常願寺川はもっと大きく、この小水力発電所は用水路にある。

常願寺川左岸から引き込んだ川としか思えない用水路のそばにある、大きな水車

上流側にある常西公園小水力発電所は、多くの人が水車と聞いてイメージしやすい、木製の水車がシンボルとなっている。水車の直径は6.5mで存在感がある。ただし、我々が見学した際にはちょうど電気機器側の故障中で停止していた。私の故郷の滋賀には琵琶湖の側に風力発電の風車があるが、もともと風の量が十分ではない場所なので十分には回っていない。そのせいで風車はモニュメントであり風力発電は役に立たないという勘違いが無意識的に自分を含め子供達の中に育っていたのではないかと思う。他方、常西公園小水力発電所は十分な水量のある場所に作られていて、復旧すれば水車は本来の姿を取り戻し止めどなく回りつづけることだろう。ダイナミックに回る水車が、それにより作られた電気でライトアップされている様子は、印象的な景色となり良い環境教育となるはずだ。

しかし、常西公園小水力発電所は9.9kWと小規模であり、採算を取ろうとして作られたものではない。それでは、結局水力発電は割に合わないのか気になる人もいるだろう。

そのような少し上級者向けには、すぐ下流側にある東町・東新町公民館小水力発電所がよいのかもしれない。

東町公民館発電所を説明いただいた富山市の担当の方

東町・東新町公民館小水力発電所は88kWであり、売電により十分に採算が取れるようになっている。(一般的に、大規模なほど割安になるという。)

 

 

水車の姿は建屋の中にあり普段は見えないが、見学では見せていただくことができた。水車は金属製であり、効率良く発電できるという。前日に見学した小瀬谷小水力発電所は比較的高落差で小流量のためフランシス水車だったが、東町・東新町公民館小水力発電所は低落差で大流量に適したカプラン水車だ。

富山平野はなだらかな傾斜が山側から海へずっと続いており、このような低落差の小水力発電所を何箇所も作ることが可能だという。豊富な水と地形に恵まれた富山は小水力発電の適地なのだ。

富山のような好条件がどこにでもあるわけではない。また、行政ではなく民間が事業をしようとすればもっと採算性を高めるなどする必要もあるだろう。しかし、このような好事例が存在するということを第一歩として、参考にできる点を取り入れて小水力発電事業を進めていくことが大切だと思う。

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今年も充実した小水力ツアーを終えることができました。2日間ずっとおつきあいいただいた富山協議会の上坂会長に、改めてお礼を申し上げます。遠くから参加された一般参加の方々、サポートいただいた会員の皆さん、どうもありがとうございました。

さて、来年は? これから皆さんのご要望を聞きながら考えていきます。最後に全員写真です。

 

 

 

 

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