第2回オーストリアツアー(6/7-8・後編)

オーストリア訪問の旅もあと2日を残すところとなりました。フォーアールベルク州はスイス、リヒテンシュタインに近いエリアなので「夕食にチーズフォンデュはどうですか?」と、食事の趣向でも、西に来た印象でした。

○6/7(木)  みんなで見学する最後の場所です。会社の名前がはっきりしなかったので後から調べてみました。

林業、伐採、切り出しをしている方の会社   www.agrar-rankweil.at

バイオマスによる地域熱供給会社  www.biomasse-rankweil.at

2つの事業体が機能しあっている会社です

2階をCLT工法で改装した社屋。 木の良さをふんだんに活かしています。

環境に優しい事業として認定されている、証明書が入口に表示してありました。

説明してくれた社長のベーンヘルドさん、持っているのは地下配管の現物

 

 

 

 

 

周辺5km2のエリアを2本の温水供給ラインでカバーしています。

2つある、バイオマスボイラー。大きい方は冬季に稼働。暖かい時期は、小さい方だけ燃やしています

 

 

 

 

 

 

今は休んでいる大きい方のボイラー内部を見せてくれました。上から段々に燃え落ちてくるようです。

稼働中の炉もちょっとだけ。開けると温度が下がりますので。

供給するラインと使う側を区別するインターフェイス機器。この仕組みはちょっと難しいです。

 

 

ご自慢の会議室、木の香りがすがすがしい。自慢したい気持ち、よく分かります。

断熱効果のある2層リペアガラスの窓

 

 

 

 

 

 

 

ベーンヘルトさんの話によると「ランクウェル村の3500haの森林を管理している、所有者は850人の民間人の所有」「1990年に大きな風水害があり7万km2がダメになりぼう大な丸太が余った」「それを見てバイマス利用を思い立った」「入念に森林を調査し70%以上の樹木が古い木だと分かり、今後42年間かけて丁寧に自然更新していけば、山が若くなると分かった」「しかし熱供給を始めた当初は、石油の値段との闘いで大変だった」「しかし、今では”うちにもつないで欲しい”と頼まれるほど。しかし、その時でもしっかりコスト計算をして導入してお客さんがプラスになるか検討する」「初期投資に7~8000ユーロ、月々の使用量など、お客さんに技術的なこともしっかり、分かってもらうまでとことん説明する」「設置後の状態も常に情報公開して質問にいつでも答えられるようにしている」

オーストリアはすでに建設した原発を、1978年、国民投票をして、僅差で「廃棄する、原発はしない」と決めた国です。その時の国民投票の時も、フォーアールベルク州は他州より原発NOの人が多かったと以前、聞きました。なるほど、こうした「とことん分かるまで説明して納得する」という文化の素地が、ここにあるのではないかと思いました。

水力発電も熱供給も技術分野の違いはありますが、メカに弱いシロウトでは、なかなかとっつきにくい構造です。しかし、そこをベーンヘルトさんは「分からない事はいつでも聞いて」「あなたが分かるまで説明します」と、そのていねい誠実な対応がここまで事業を確実にしてきた基本ではないかと拝見しました。

近くでランチをいただいて、午後は自由時間です。と言っても、全員がフェルトキルヒ市へ移動して、ひとまず、市内の観光地メインである旧市街あたりを歩いて、再集合しましょうと、それぞれに一回り。

旧市街に面した商店街のような建物と道ではカフェテラス
丘の上に中世のおもかげたっぷりのお城があります

旧市街のランドマーク、猫の塔。 横断幕は「フェルトキルヒ市お誕生800年のお祝い」 

6/7の当初の予定では、フェルトキルヒ市のシュタットベルケが保有する水力発電所2ヶ所の見学を予定していたのですが、この「お誕生800年」一大イベントのために市の職員の人が対応不能との返事があり、発電所内部や芸術文化センターの見学は諦めざるをえませんでした。旧市街地のすぐそばに1ヶ所、歩いて15分ほどの場所に1ヶ所あると聞いていたので、自由行動の間に行ってみました。

フェルトキルヒの事は、以前、オーストリアを何度か調査訪問している、京都府地球温暖化防止活動推進センターの木原さんから情報をもらっていたことが大変役立ちました。ここからは木原さんのレポートから引用させてもらいます。

「1906年に住民出資で建設されたのが、第1発電所(2300kW)で、市内のそばを流れている川から運河を引いています。

旧市街地に突然出現する運河を利用した、第1発電所
フェルトキルヒ第2発電所
地下建屋の上に巨大な除塵機が

当初は石炭火力も併設して独立系統で運用されていたが、1924年に大きな系統に接続されたのを機に、石炭は不要となった。1992年にオーバーホールして発電機を入れ替え、無人運転となった」

 

 

「第2発電所は2003年、第1発電所へ導水する運河を改修した時に、同時に堰も大規模改造して堰の真下に水車発電機を設置した(4000kW)」

 

 

「もう一つ、第3発電所は2014年、7200kWであるが、ここは遠くて見れません。この3つの水力発電所でフェルトキルヒシュタットベルケは、市内電力の4割弱を賄っていて、送電網も所有している。足りない電力は、フォーアールベルケ州公社から買っている」との事でした。

 

2つの発電所や今回、入れなかった文化芸術センターの前を通ってバス通りに戻りました。市内はシュタットベルケが配信しているフリーWi-Fiの表示がありました。

ここまでが今回のオーストリアツアーの全日程です。この後、午後の自由時間は各自、買い物や夕食にあてて、無事、みんな夜までにホテルに戻っていました。6/8、翌日の朝、荷物をまとめてフェルトキルヒ駅から電車にのり、行きの逆でチューリッヒ空港へ移動しました。

旅の途中、ちょっと熱ぎみの方がおられた程度で、皆さん、ケガ病気もアクシデントもなく、トランジットが長い方もおられましたが、6/9の夜までには日本にもどってきた次第です。

第2回オーストリアの小水力を訪ねるツアーを終えるまで、去年から準備を手伝ってくれた通訳のモニカさん、オーストリア大使館様の後援、賛助会員のWWS-ジャパン、イー・セレクトの皆さんにお礼を申し上げます。

何よりも、1週間という長い時間をツアー参加に確保してくださった参加者の皆さん、ありがとうございました。それぞれのお仕事にこのツアーがうまく役立ちますことを願っております。

来年も3回目ができますように・・・。            (文責:里中)

第2回オーストリアツアー(6/6・中編)

前半6/4~6/5は、小水力発電所見学に集中しました。去年より規模の小さい発電所を探してもらった事と訪問した時がちょうど水量の少ない時期だったので、地理的条件、気候や河川環境など、日本とオーストリアの違いを差し引いても、参考になる場所が多かったです。訪問先は、ザルツブルグから南東と北東、リンツ市周辺という回り方をしました。

後半の6/6~6/7は、チロル州、フォーアールベルク州へ西へ移動しました。ここから小水力発電だけでなく、オーストリアのエネルギー状況全体の様子を知ろうという企画です。人々の暮らしの中に根づく再生可能エネルギーを知ることで、さらに小水力発電を促進する意義に近づきたいと考えました。

前編=6/3-6/5 中編=6/6 後編=6/7-8としました。

6/6の出発の前に、6/3-5、宿泊したフリザッファ―ホテルの写真を少し紹介します。去年、第1回の時も利用させてもらい好評だったホテルです。

ザルツブルグ市内より郊外の村にありますが、とても快適なサービスでした

 

中庭をはさんで朝食は朝日がまぶしいテラスでも

今日は荷物をまとめて、西のフォーアールベルク州に列車で移動します。なので、お世話になった貸切タクシーの運転手さんが、荷物用キャリーをタクシーの後ろにつけて準備してくれました。これが、超優れものです。現地のマイカーをよく観察すると、この「後ろにキャリーを引くための装置」、何と呼ぶのか分かりませんが、キャリーを引いて回転してもバックしても大丈夫なように、前の車と電気回路がつないであってウィンカーが連動しています。8人乗りタクシー座席にみんなで座って、メイン車のトランクはそんなに広くないので、このキャリーがあっておお助かりでした。

優れももの、キャリー。全員の荷物を積み込みました

 

 

 

 

 

オーストリアは家族、友達、みんなで長い休暇を楽しむ文化がある国です。アウトドアが盛んで、キャンプ、トレッキング、魚釣り、ボート・ヨット、ハングライダーなど、大きな荷物を積んで1週間、2週間、美しい自然のある場所に出かけて、思い切りリフレッシュするのだそうです。そうした時に、こうしたキャリーは必需品。運転手さん曰く「みんな、持っているよ」「これが無いとキャンプに行けないから」と。さらに「日本にはないのか?」「なら、日本人はキャンプに行く時、どうするの?」と聞かれましたけど、(う~ん、困った)。「キャンピングカーをレンタルするかも、、、」と、もごもご返事しましたが、第一、日本では2週間も仕事を休めるないよ、なんて説明できへん・・・。仕事と休暇のオン/オフ環境自体が、オーストリアと日本では違うので、、、と、そんな難しい英語は話せなかったのですが、何ともうらやましい気持ち。と同時に、人口一人当たりの名目GDPは、オーストリアより下の日本だというデータを思い出しました。平日、働く時はすごく集中してハードワークし、休む時はしっかりオフを楽しむオーストリアの皆さん。この切り替えの良さは、日本社会も学ぶことがあるのでは、と思いました。

○6/6(水)  ザルツブルグ州からチロル州に向けて山道をキッツビール市に向けて走りました。予定通りの時間に着くと、同市のシュタットベルケ責任者、コーンベルガーさん、市長の代理でニコレッタさん、管理担当のハイデッカーさんが迎えてくれました。

キッツビール市シュタットベルケ HP  www.stadtwerke-kitzbuehel.at

通された会議室のテーブルの上には、こんな午前中の訪問なのに、おごちそうが山のように!!

飲み物、おごちそう、お土産満載のテーブル

「プレゼンを聞きながらお気楽にどうぞお召し上がりください」と言われても、(もぐもぐしながら聞くのは、失礼では、、、)と、私以外の参加者もあまり口にしなかったので、残してしまい、これもまた失礼なことになってしまいました。ご準備いただいシュタットベルケの皆さん、ごめんなさい。たくさん記念のお土産もいただきました。ありがとうございます。

キッツビール市の人口は8300人、来客者が1万人ということで、合計約2万人が暮らす、滞在するという想定でライフラインが構築されています。1960年代、往年のスキープレイヤー、トニー・ザイラーさんの名前はご存知ですか? ここは彼の故郷であり、日本との縁は、山形市と姉妹都市なので定期的に交歓をしているそうです。今年も19人で山形、東京、広島に行く予定だと言っていました。コーンベルガーさんのプレゼンも開口、「ミナサン、ヨウコソ、オコシクダサイマシタ」と、日本語で歓迎してくれました。

プレゼンのスライド、モニカさんのドイツ語通訳をはさんでやっと分かるかな?

同市のシュタットベルケは、市議会が100%持っているタイプのものです。行政、市議会、シュタットベルケ委員会という構造の中で、水道・電気・下水・ケーブルTV・インターネット・市内バスを運営しています。

 

シュタットベルケの発祥の元や、やはり水力発電でした。廊下の壁にあった古い写真と当時のチラシを入れた額縁を持ってきてくれて、「1893年、この水力発電所から電気が生まれました。ここに”6/8はあなたのランプを持ってきてください、これから電気をあげます”と書いてありますよ」

1893年と言うことは明治26年。蹴上発電所が運転開始したのが明治24年、1891年。ほとんど同じ時期に、オーストリアでも日本でも、水力発電所が建設されて、地域の人々に電気を配り始めたことが分かりました。(やっぱり、水力、いいね)と秘かに納得。

記念すべき初めての水力発電所、稼働のお知らせ(1893年)

市全体で年間に必要とされる電気総量は約90Gwhだが、シュタットベルケで発電できる量は、約75Gwh。足りない分はチロル州20ヶ所を統括する「TIRAG」から、あるいはオーストリアの民間配電会社のエンパッハ社、ドイツ、ライプチッヒにある電力取引所などから買うとの事でした。

 

市が保有する4つの水力発電所のうち車で行ける範囲の2ヶ所を案内してもらいました。1ヶ所目は、水道施設の中に設置したペルトン水車を見学しました。

市街地から約100m登った所にある水道施設の中にある水力発電を見に行きます。

施設内の部屋にこじんまり設置された水力設備、音があまりうるさくない
こちらは上水の貯水タンク。大事な市民の飲み水は山からの湧水です

 

 

 

 

 

何より日本との違いは、水への意識の違いです。日本では、「上水の<途中>に発電装置を設置して、発電した後の水を人間が飲むなんて」と、まるで発電に利用した水は汚れているかのように嫌う傾向が上水管理者にあるように聞いていますが、こちらでは「そんな事、ぜんぜん、気にならない」との事でした。

実際、ツアーを続けている中での食事風景の時、あんなに美味しいレストラン室内でも、ハエがぶんぶん飛んでいるし、大きな樹の下の野外テラスでは、上から花の雄しべか雌しべかがはらはらと、降ってくるしで、ドリンクの上にコースターでふたを置かないと、雄しべまで飲んでしまうはめになります。

しかし、オーストリアの皆さんは「これで普通、自然なんだから」と気にしていません。こんな自然への感覚の違いが、上水施設での小水力発電を当たり前にしているのかも知れないと感じました。

もっと高い位置にある上水施設

続けてもう一つの上水施設、水力発電所を見せてもらいました。

3つ並んだ水車と発電機

 

 

 

 

 

紫外線で水道を消毒するらしいです

 

 

 

 

 

ドイツやオーストリアのエネルギー事情を支えるシュタットベルケの仕組みがすべて分かったわけではありませんが、京都大学の諸富先生がある講座で「シュタットベルケでは収益プラス事業であるエネルギー部門で利益を出して、マイナスになりがちな交通網サービスを補てんしている所が多い」とのお話しを聞いたので、同じ質問をコーンベルガーさんに聞いてみると「はい、その通り」でした。市民の足を確保するという事は行政にとって大事なサービスですが、どこの国でも交通部門だけで収益をあげるというのは難しいことのようです。どんな山の上にも家があって各家庭は、雪道でも登ることができるマイカーをお持ちですが、それでも市内を循環する交通網をきちんと維持運営していく事は、街そのものの動脈静脈を健全に保つ意味があると思いました。この話は、翌日の街、フェルトキルヒ市でも感じたことです。

次の見学先は、当協議会賛助会員(有)イー・セレクトさんの提携先であるビショファー社が設置管理している、山の上のチーズ工場、レストラン、ペンションに向かいました。

緑のポロシャツを着た、チーズ工場の若き経営者と隣は3日間お世話になった運転手さん

チーズ工場はかなり山の上。下のパーキングでキャリーを分離して、案内役のビショファーさん先導で登りました。

 

 

 

ビショファーさんはこのタフな車で発電所を回るようです

まず最初にチーズ工場の見学と説明を聞かせてもらいました。ここは実際に牛を放牧しながらその牛から搾乳した新鮮な牛乳からチーズをつくっています。なので、工場もレストランもペンションも春から秋までの放牧期間だけのオープンです。そうした限定的な電気の使い方も、ここが「独立電源」として成立している要素ではないかと思いました。

※冬の間でも雪のトレッキングを楽しむ人達のために、トイレ施設に必要なだけの電気は年間、供給しているとの事です。

ガラス窓の向こうの工房と保管庫。
今日、カットしたチーズ(名前は忘れました)とハム、ベーコン、サラミなど

パンを焼く香ばしい匂いがふんわり漂っていました、本当に美味しそう 

 

 

 

 

 

発電所建屋はチーズ工場のそばですが、軽くランチをいただいた後に、取水ポイントまで車で登ることに。ここから更に200m以上も上なうえに悪路の坂道で、ちょっとドキドキしました。

この山道を登りました

この小さな谷間が取水ポイント、先を歩くビショファーさんと彼の娘さん、モニカさん

 

 

谷間の水と昔利用していた1号取水の水もパイプで足していました。

 

建屋はガラス張りになっていて、トレッキングやチーズ工場訪問者にもよく見えるようになっています。上部には小水力発電所についての解説ディスプレイがあって、誰も居なくてもここの発電所のことが分かるようになっています。ビショファーさんご自慢のショールーム的モデル発電所です。

建屋の前、右端にビショファーさん
落差で稼ぐペルトン水車

 

いただいた資料によると、

水量=50L/s

落差=268m 出力=105kW

 

 

「独立電源」は発電する量と使う電気とのバランスをどうとるのかが課題となります。ここの発電所は、使う側の量に合わせて「デフレクター」を調整して出力調整をしているという、かなりマニアックな方法だと言うことでした。

 

夜にはフェルトキルヒ駅に到着しないといけないので、一番近い、特急の停まる駅、ウェルグルまで降りて、そこで貸切タクシー、運転手さんとお別れ。フォーアールベルク州へ移動しました。

改札口がなく、すぐにホームに入れるオーストリアの駅です。ここでも指定車両の場所が分からない問題が・・・と思いきや、ホームに1等、2等、号車の図解の掲示板がありました。「そうそう、これが無いと分からないよね」と、初日の特急車両探しで慌てたことも笑い話に。

車両構成を示す図解、これがチューリッヒ駅になかったのですよ

夕方、フェルトキルヒ駅に到着して、宿泊先のランクウェル村のホテルに無事到着しました。(後編に続く)

 

第2回オーストリア小水力ツアー(2018/06/02~09)~ (6/3-5前編)

昨年5月に実施した第1回オーストリア小水力ツアーが好評だったので、今年も1月から準備を進めてきました。昨年同様にオーストリア大使館の後援をいただき、会員と一般参加者、合わせて11名で1週間、オーストリア(一部ドイツ)を訪問してまいりました。

○6/2(土)  すでにドイツに到着している2名、関空以外から出発する1名を除く8名が関空から出たのですが、香港までのフライトの都合で結局、香港空港で3名と合流することに。携帯電話とfb電話を使ってやっと出発ゲートで5人+3人になり、ここで第一関門を突破、ひと安心。

6/2香港空港トランジット

 

 

 

 

 

○6/3(日)  チューリッヒ空港行きに乗り換えて約11時間。関空を6/2の夕方に出発して、スイスに着いたら6/3の朝の6時・・・。時間差を数えることはやめて、とにかくすがすがしい朝です。

まずは予定している電車に乗らないとザルツブルグに着かないので、第二関門の列車の乗り継ぎへ。

何しろ、明日の朝にならないと英語、ドイツ語の通訳をしてくれるモニカさんが不在です。みんなで頑張って間違えないように、ザルツブルグに行き着きましょう。

指定予約した車両に乗り込むべく、でも、その車両が停まるホームの位置が分からなくてウロウロ。長いホームの掲示には4A~4D・Eとか書いてあるけど、(これ、どういう意味?)

6/3朝、チューリッヒ空港駅のホーム

しかも、チケットはモニカさんがネット予約してくれたのを日本でダウンロードしたプリントのみ。結局のところ、空港駅からチューリッヒ駅までは8分ほどしかないので、どれに乗っても良かったらしいのですが、めまぐるしく変わる到着電車の行き先が判別できないので、予定通りの電車を40分ほど待つことに。でも、ここのカフェは、スイスフラン。ユーロしか両替してない人が勇気を出してコーヒーをゲット。何が何だか分からない換算らしかったですけど、ひと休みできました。そして、次の第三関門はインスブルック駅での乗り換えです。

6/3朝、スイスの湖
スイスの湖
車窓から見えた川

 

 

 

 

 

乗り換え時間が5分しかないインスブルック乗り換えで、ちょっとしたトラブル。やっぱり指定車両がどこにあるのかわからへん。ホームを走っている人がいっぱい。(これは何の騒動なんだ?)と、とにかく私達の車両を探している時間が無いので、目の前の車両に乗ったのですが、どうも、そこは1等車らしい。でも私達は2等車。ところが、ものすごく長い車両編成なので、1等から2等に通りぬけ移動できない事が、乗ってから判明! これはマズイ・・・。

なるほど、あの時ホームを走っていた人達は、2等車両がどこにあるか分かっていたからそれを目指していたんですね。

特急ですが、次の駅でホームを走って、律儀に2等車に移動した若い3名。しかし、プリントアウトは私しか持ってないよ。彼らはキップを証明できない事に後から気づいて、ハラハラ。

何しろオーストリアには<駅の改札口>というものが無くて、出入り自由のとってものびやかなシステムです。キップの確認は車内だけ。でも、もしキップを持たずに乗っていたら、全額と罰金を取られるかも知れない仕組み。1等を回っているQBBの赤いネクタイの車掌さんに「別車両に移動したグループメンバーがトラブルになってないか、連絡して欲しい」とお願いしても、「心配ない、大丈夫、ノープロブレム」と1等座席にどっかり座って、手を広げるばかりで、取りつくシマもなし。

しかたないので、Wカップのサッカーチームがインスブルックで合宿しているみたいなどの話をしながら、1等に残ったメンバー5人は、指定席を無視してビュッフェでお茶。そうこう言っているうちに、ザルツブルグ駅に着きました。

駅から荷物が多いのでタクシーに乗り、ひとまずホテルに荷物を置き、みんなでバスに乗ってザルツブルグに市内に出ました。「25番のバス、値段は2.6ユーロ、降りるバス停はここ」と去年のツアーでもサポートしてくれたドイツに住むフィリップさんが、事前に詳しくメールしてくれたおかげで、市内バスを体験できました。

こうして初日の4時間ほどは市内観光の時間がとれました。

ホーエンザルツブルグ城から見た市内
水量が多く濁ったザルツ川

 

 

 

 

 

 

○6/4(月)  今日から小水力発電所めぐりが始まります。初日は、協議会賛助会員(有)イー・セレクトさんが業務提携している、ウンターレアハー社が管理している発電所2ヶ所に行きまました。

※これ以後、本文と、写真/キャプションでお伝えします

ここは2017年にリプレースしたパン屋さんがオーナーの自家消費と余剰売電をしている発電所です。昔、クロスフローを使っていたのを、今は4射タテ軸ペルトンに更新していました。

地下ピットを上から見たところ、フタに「2017」年とあります

 

取り外した古いクロスフロー水車、地下ピットの壁にリプレース工事の時の写真もありました

3つの入口弁はバルブ開け閉めでオン/オフとし、4つ目を独自の技術で微妙な水量調整をしているとのことでした。 案内してくれたのはウンターレアハー社のガブリエルさん。

案内してくれたガブリエルさんとモニカさん
水車の銘板
コントロールパネル画面の一部

 

 

 

 

 

使っている水は800mほど離れた鉄道のトンネルの湧水だということです。ヘッドタンクから発電所、発電所建屋からパン屋さんまで送電するための道路埋設について規制はないのか?と聞くと、「ぜんぜん、何も問題ない」と。ここが日本と違いますね。

このトンネルの湧水が水源だそうで、そこは見ることが出来ませんでした。

ヘッドタンクを点検するオーナーさん

オーナーさんのお店でパンを買って、近くにある村の素敵なレストランへ。モニカさんによると「村のレストランの役目はとても大事」だそうです。地域コミュニティの拠点で、消防団、サッカーチーム、ダンス同好会、あらゆるサークルや村の会合に使われているそうです。

オーストリアを訪問して感じることですが、失礼ながら(こんな小さな村、500人くらいしか住民がいないみたいなのに、どうしてこれほど美味しくて素敵なレストランが、それぞれの村にあるのかしら・・・?)と、ずっと不思議でした。日本ならそうした会合場所は、公民館、自治会所、小学校になるのでしょうが、オーストリアでは、みんなが集まって話し合う場所が<村のレストラン>だそうです。そうした習慣や大人の集まり方からしていろんな「合意形成」のプロセスが違うのかも、と想像しました。

パン屋さん、開店時間は早朝から12時まで
昼間からこのボリューム!! 食べきれない
美味しいスープでした

 

 

 

 

 

 

午後、次の見学先は養魚場の奥にありました。

稚魚といけす、これは昨日食べたマス?

まだ調整中で稼働前の状態でしたが、クロスフロー水車、30kW、落差30m、流量130L/s。

水色が水車、黄色がフライホイール、赤が発電機
木材を周囲にめぐらした建屋、雪対策というより景観重視でしょうか

 

 

 

 

 

今回の訪問先は、できるだけ100kW以下でと要請していました。オーストリアの水車メーカーにとってはもっと大きな規模の発電所を自慢したかったと思いますが、日本でのポテンシャルと考えた場合、50kW程度の規模をオーストリアではどのように設置稼働しているのかを見学したいとお願いしたところ、今回の場所を選んでくれました。

ホテルへの帰り道、世界遺産の村、湖の横を通って1日目を終了しました。

絵葉書のように美しい湖と空、山々

 

 

 

 

 

 

○6/5(火)   今日は午前中はらせん水車、午後はカプラン水車を見る予定です。

(こんな平原のどこに川があるのかしら?)と思いながら車がとまった場所の横に、いきなり水路が。去年もそうでしたが、街の中に引きこまれた水路は民家の間を通り、なかなか外から発見できません。

向こうの奥に見えているのがらせん水車

らせん水車は同じくイー・セレクトさんの業務提携先である、クーン社(ドイツ)が製造、設置したものです。同社のエンジニア、フランツさんが案内してくれました。

 

ここもオーナーがパン屋さんだそうです。やはり粉ひきの歴史が長いのでしょう。昔から水利権を持っている事は大事です。

 

落差1.4m、最大600L/s、7.5kW

ここを管理している男性、大きな声で自慢のらせんを説明してくれた

ここを管理している男性いわく「設置してから13年間、このらせん水車は、何のトラブルもなく動いている。僕は他の再生可能エネルギーも関わって、太陽光もバイオマスも風力も知っているが、水力のらせんが1番だ、素晴らしい!」と。手間がかからない、メンテもちょっとだけ、ベルト交換だって超安いと、お気に入りでした。

 

横に魚道があります
ベルト駆動の増速機、一番消耗するところが見えるのがキモ

 

 

 

 

 

昔はこの木製水車があったことを忘れないようモニュメントで残してあります

 

ここのパン屋さんオーナーは若いカップルで、パンには有機農法の粉を使っているということでした。彼のニコンのカメラでを記念撮影をしました。もしかして、このらせん水車を訪問した初めての日本人が私達かも知れません。

 

管理している男性は「近くで地域熱供給をバイオガスでやっている、見に来ないか」というので、ちょっとだけ見学させてもらいました。

木材を処理する作業
出てくるチップが結構、大きい
バイオガスでエンジンを燃焼させて熱を発生? ちょっと仕組みが分かりません

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2番目のらせん水車は、本当に水量が少なかったです。ここは家族で製材業をしている様子で、昔から製材業の動力に水車があったのを多くの事例のように、発電に切り替えたものの水量が減った時に対応しにくかったので、水路の手前にらせんを設置して自家消費くらいは、というアイデアは、オーナーさんが考えたそうです。

水量が多い時は奥の建屋でもっと発電します
手前水路の左はカプランの取水へ、向こう側川へらせんが設置されている
どこから取水されているか分からないけど、今は水量少ない、多い時は右岸からオーバーフロー
水路から引いた水を回しながら川へ
直流の発電機だそうです

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく使ってない様子の除塵機
水量が多い時に稼働するカプラン水車との事です

 

 

 

 

 

 

午後の1つ目は、WWS社が設置した発電所です。当協議会賛助会員WWS-JAPANはその日本法人です。同社のシャラーさん、フェリックスさんが案内してくれました。

まだ新しい建屋、オーバーボールの時は屋根ごとはずすとか

 

 

 

 

 

フランシスみたいですが、横軸カプラン

落差6.3m、流量2.3m3/s、130kW

でも当日は流量が少なくて2kWでしたが、フランシスなら発電しないかも?

取水水路のゲート、指を指しているのがシャラーさん
細かい除塵機の前に、水面のゴミをよけるための木材がななめに渡してある
ここの川からゆるやかに水をひきこんでいました
横に魚道が必ずあります

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

最後にWWS本社の建物に付属している古い発電所をリプレースしている途中の現場を見せてくれました。

後ろの建物がWWS社の工場、この落差で発電してきた

古いフランシス2基のうち1基をカプランに
自然の中に溶け込む水力発電所

 

 

 

 

 

中編(6/6)、後編(6/7~6/8)に続く

(文責:里中)

第7回総会の報告~2018/05/19

関西広域小水力利用推進協議会 第7回通常総会を、2018年5月19日(土)に京都市内のしんらん交流館大谷ホールで開催しました。

正会員:総数113名、 出席数21名、 委任状提出30名で総会は成立。 議長に正会員の山本博史さんが指名されました。議長が議事録署名人に、瀧与志さんと松岡昭夫さんが指名されて、議事が進行され、第1号議案から第2号議案の提案後、特に質問もなく 第3号議案「2017年度監査報告」を、田中監事が報告しました。第1~第3号議案に関して、議長が出席会員に諮り、拍手多数で議案、報告は承認されました。

第4号議案「2018年度事業計画」(案)および第5号議案「2018年度予算」(案)を澤田理事がまとめて提案しました。今年度ツアーは鳥取方面を計画中で、できれば実行委員会形式で進めたいとの提案があり、第4号、5号議案に関して質問はなく、その後、議長が出席者に諮り、拍手多数で議決されましたた。

澤田理事より提案

 

 

 

 

 

 

第6号議案新理事承認について議長が新理事候補者に前に登壇するよう促しがあり、当日出席した新理事候補である、南川良三郎、澤田享子、竹尾敬三、岡山秀行、安藤操、里中悦子(田浦健朗、古谷桂信は欠席)らが自己紹介をしました。その後、第6号議案に関して、議長が出席者に諮り、拍手多数で議決され、新理事が承認されました。

理事候補から自己紹介

議長は、議案の審議をすべて終了した旨を告げて閉会を宣言し、後半イベントの間の休憩に入りました。

 

 

 

 

○映画「ダムネーション」を上映鑑賞

○上映後 運営委員の宮本さんと下村さんがそれぞれに感想が述べたのを契機に、会場からも発言、質問がありました。この場は、何らかの結論やまとめを求める場ではなく、自由にダムや水力発電について語り合いましょうという趣旨だったので、さまざまな意見が出されました。

映画を観て、思うところを出し合って
体験談を話す宮本さん

 

 

 

 

 

 

 

ここからは私の感想です。この映画は、アメリカで製作されたダム建設とその後についての記録映画です。見方によりますが、ダムが悪いのか?建設されたダムが悪いのか?ダムは本当に必要だったのか?と、多面的な解釈ができるようです。プロデュースの「patagonia」さんの意図もかなり入った内容ですので、ドキュメンタリーといえどもきっちりと見切る必要があると思います。

ダムについて語る時だけ環境について語るとすれば、水力発電は成り立たなくなります。試写後いろいろの意見が出ましたが、当協議会として考えないといけないことは、水をせき止めたときには自然を改変しているということです。発電のために取水するということ事体が人のために自然を変えることです。生物多様性については、その事体は尊重することに異議はありません。再生可能エネルギーとは、人のために将来困らないようにしようというものではないのでしょうか? 人は傲慢です。そのため少しでも自然に助けてもらって生きていこうということから、再生可能エネルギーを選択しようとしているのではないでしょうか?

小水力発電を推進しているのに、どうしてこの映画を見ないといけないのという意見も聞いています。確かにそういった意見もあっていいかと思ます。自然に活かされ、自然の厳しさに対峙しながら生きているのが現状だと思います。

当協議会として今後小水力発電を進める上で、考えないといけない課題であるとともに、少しでも自然に優しいのは、やはり小水力発電だと言えるようにしていければいいのではないでしょうか?

○奈良県東吉野村「つくばね発電所」の報告

森田さんの報告

 

2017年8月に運転開始した奈良県東吉野村「つくばね発電所」について森田康照社長からの報告は、本当はすごく苦労されているのに明るく楽しく話をしていただいて、参加した会員の励みになったと思います。

 

森田さんのフェースブックに載せられている報告を見ていると、大雨の後などには取水口付近は、言わば災害ですが、それにも負けず修理をしながら運営を続けられていることは、これから事業をしようとしている会員の方々にとっても、すごい励みになると思います。大変値打ちのある報告であったと思います。 (文責:竹尾)