初めての工場見学~2024/2/27、三谷合金製作所さんにお邪魔しました

今年度最後の企画として、宇治市の会員、株式会社三谷合金製作所さんのご厚意で、工場の見学をさせていただく事になりました。

社長挨拶 | 会社のご案内 | エッジワイズコイルをはじめとするコイル、コア、タービンなど開発・製造の三谷合金製作所 (mitanigoukin.co.jp)

当協議会から、理事、運営委員、一般会員の8名で見学させていただきました。

宇治川左岸そばにある三谷合金製作所さんの社屋

最初に会議室で会社の概要、製品の製造の流れなどプレゼンテーションをしていただき、ヘルメットをかぶって、工場内へ。

会社の沿革から製造製品の説明

発電機を構成する「ポール」いう重要な部分を製造していて、国内シェアは約7割と伺いました。事務室に日本地図が貼ってあり、納入先がマッピングされているのですが、納品してない県はわずか4県だけという事で、納入先のメインは電力会社でした。

工場内部の写真はさすがに撮れませんでしたので、会議室に掲示してあった巨大な発電機の写真と、参加者3名、新川理事さん、宇野理事さん、一樋運営委員さんの感想文でご想像ください。

「宇治市槙島町に工場を構える(株)三谷合金製作所は、発電機の界磁ポールの専門メーカーとして著名だと聞いていたのですが、水力発電機については国内でも最大のシェアを占めているとは思いもしませんでした。技術的には既に完成されているとのことで、50年以上前の発電機のリプレースやポールの補修なども多いそうです。三谷合金の取り扱いではもちろん大型のものが中心で、私たちが焦点を当てている小水力用のものはやっていませんでしたが、水力発電にかける三谷社長の情熱が感じられる会社でした。
 実際の製造工程を見学する機会をいただきました。重電メーカーなどからの注文が多いそうですが、定められたスペックに応える品質管理の良さが大切にされています。プレスなどの機械力も使うのですが、すべての作業がひとつひとつ手作業を介して進められていて、発電機のポール製造が職人芸であること、だからこそ品質を維持できることがよくわかりました。」(新川達郎)
得意先での発電機組み立て風景(会議室に掲示してある写真1)
 コイル絶縁材はノ‐メックスと聞き、約50年前のことで懐かしくなりました。
フランスからノ‐メックス絶縁材使用の小型ポンプを輸入しました。
電気用品法で未承認の絶縁材として定格認証が取れなくなりました。
化学研究部門の協力を得て東京の電気用品試験所に何度もデータを示し、
日本でノ‐メックスをF種絶縁材として承認されたことです。

 事業構造が大きく変わっって三谷合金製作所さんの発展につながったとお聞きしました。
現状の事業を見るだけでなく、次世代の変革の兆しを掴むことが重要と感じました。

 大型発電機・電動機のコイルの構造がわかりました。漠然と太い銅線をまいていると予想していました。板金銅板を成形したコイル製作法はすごいと思います。アンペア・ターンで考えるとこの構成は巻数よりも電流を重視と思いました。

 新規事業で相似形の小型にした発電機は、小水力発電の内でも発電量が大きい分野になると予想します。

 丁寧に説明していただき、大変勉強になりました。ありがとうございます。(宇野浩)
現地発電所での発電機取り付け風景(会議室に掲示してある写真2)
工場見学はかれこれ40年ぶりのことでしょうか。
学生のときは一応(一応です)電気工学を専攻していたので、それ以来のこととなりました。(仕事は全然違う分野でしたが)

子供の頃から模型とかを作ったり触ったりすることが好きで、小さなモーターなども分解して喜んでいました。
また学生時代は、電気工学の一分野である「電磁気学」に特に関心を持っておりました。(必修科目でしたがサボっていたので2年受講してしまいましたが。。。(汗笑))

ご存知の方も多いと思いますが、電動機と発電機は表裏一体の関係です。
最近の鉄道(電車)や自動車(ハイブリット車やEV)でも、「加速時は電動機として」「減速時は発電機」として使用されています。
その性能を決めるのが、「コイル」と鉄芯(磁性体)の開発だと思っております。
ただ、あのように大きな出力の発電機や電動機の「部品」となると、製造されている「もの」が全体の構造(製品)の中の「どの部分」となるのが、わからなくなることも度々でした。

その辺を工場内で丁寧に説明していただきよくわかりました。
電動機や発電機は、これまで製造メーカー(大手の重電メーカーなど)が、直接素材から最終的な組み立てまで賄っているものだろうとこれまで考えておりました。

三谷合金さんはその部品の製造を、合金作りのノウハウを活かして進められてきた(受注されてきた)ということに驚いております。
(小さな電動機や発電機そのものを組み立て製造されている会社なのかな?と最初は思っていました)
巨大な発電所に設置するときなどは、三谷合金さんで完成したものを直接現地で組み立てることなど、はまるで建築現場のようです。
それくらい大きなものまで製造されていることを考えると、正直なところ小水力で使用される発電機の部品に関与できるのか?ということも疑問にも思いました。

しかし一方で電車電動機のコイルや鉄芯なども手掛けておられるのであれば、可能なのだろうとも思います。
(最近の鉄道車両も電力ロスが大幅に減り、小型でハイパワーのものが開発されてきています。だいたい一台当たり100kW〜200kWのものが使用されてきています。それを1両に3ないし4個が車両の床下に搭載されています。直径が人の腰から胸の高さくらい)なので、十分小水力発電にも対応できる規模だろうと想定しています。

工場で私が特に感心したのは、コイルを作る行程で「平板状態」(例えば10cm幅)の素材(銅板)を、その平面部分を90度曲げコイル状にしていくことです。
普通、金属などは薄い面に逆らわない方向には容易く曲げ伸ばしすることは簡単です。
しかしこの工場ではそうではなく、面の方向に曲げるということ(言葉ではなかなかイメージしずらいと思いますが)、それを幾十にも繰り返し、コイルに仕上げていく、という行程です。
初めは、銅板を型抜きしそれを溶接していていくのか?とか鋳型で作っていくのだろうと思っておりました。

「銅と鉄」
近代工業の中心的な金属資源を巧みに操り製品を作っていくということ、そしてこれまで時代の先端にチャレンジされてきた事に敬意をいたします。
その上でさらに未来を見据えて、次のステップを考えられている社長以下従業員の皆様のご活躍を期待してお礼を申し上げます。(一樋和美)

小水力発電とふた言目には「発電」を口にしてきたわりには、発電機ってどういうものか想像が出来ていませんでした。

見学させてもらったからと言って、すぐにわかるものでもないのですが、「銅線コイルを巻く」「鉄芯を造る」という言うことが目の前に展開されていて、小学校の工作の時間を思い出した人もあるでしょう。まさに、アレが巨大な製品となって三谷合金さんの工場で「発電機用ポール」という製品が出来ていたのです。

最後に集合写真を撮って、お礼を申し上げて、解散しました。

三谷合金製作所様、本当にありがとうございました。(事務局:里中)

特別企画:発電機メーカーの工場見学~発電機ってどうやって造っているのか見てみましょう!

発電機って、どうやって造るのか解説本の図や写真を見ても、よく分からないものです。

昨年、当協議会に入会いただいた三谷合金製作所㈱さんが、京都府宇治市で発電機のコア部分を製造されています。

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関西協議会では、三谷合金製作所さんのご協力を得て、下記のように工場見学会を企画いたしました。

平日の午後ですが、会員以外の方もご関心のある方は、どうぞ、ご参加ください。

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日時:2024/2/27(火)

〇一次集合:午後1時

 工場見学:午後2時~4時頃まで

〇見学場所:㈱三谷合金製作所(宇治市槇島町吹前107-1)

〇参加費:協議会会員無料、一般参加¥1,000

〇参加方法:協議会メンバーが車を用意します。

 ・一次集合場所は「JR奈良線/宇治駅」か「近鉄/向島駅」のどちらかに集合してもらい、そこから車乗り合わせで工場へ移動します。

 ・参加者数、参加者の方の利便性など、募集してみて一次集合場所を決定します。 

〇添付チラシ2枚目の申込用紙を利用して、

 メルアド=info@kansai-water.net

   FAX=075-371-0794

2/19(月)までにご連絡ください。

締め切り後、参加希望の皆さんに、2/24(土)までに、決定した一次集合場所を連絡します。

〇問い合わせ先=080-7051-5830(里中)

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連続講座ラストは1/20(土)の講師は、金田剛一さんです

昨年11月からスタートしている連続講座の3回目が1/20(土)午後に開催します。

何かとお手間がかかるイメージの強い小水力発電計画ですが、それぞれの過程で乗り越えないといけない問題が生じた時、それを超えていけるモチベーションとは、どんなものがあるのでしょうか? 

過去の小水力発電計画、建設でご苦労を重ね、知見体験を積み上げてきた講師の皆さんのお話を伺う連続講座もラストとなりました。

参加ご希望の方は、下記エクセルでお申し込みをお願いします。事務局:里中

連続講座「諦めない小水力」第1回、第2回の様子

協議会主催の連続講座「諦めない小水力」、11月25日に第1回目、12/9に第2回目を開催しました。

第1回目は「土木から語る小水力の面白さ」をテーマに、電力土木技術協会の小松俊夫さん、伴至さんが講演してくれました。

「実は、、、ここだけの話」が多々ありましたので、記録はとっておりませんが、あっと言う間の3時間半でした。

講座に参加した協議会会員や初参加の人も含めて、「う~ん、そういう事なのか」と、改めて小水力の基礎の大切さを実感した時間でした。

11/25当日の写真を紹介します。

小松さん、ホワイトボードで講演内容を補足説明
小松さん「こうしたテキストで基礎を学びました」
伴さん「通常はほとんど面白くない。ただし、完成した時の達成感、満足感は”ひとしお”である」
伴さんの補足説明。ダムの嵩上げとは何ぞや?
後半の座談会風、参加者を交えてのぶっちゃけトーク。すべては小水力の未来のために!

第2回目は「地域から語る小水力の面白さ」を、1980年代から熊本で小水力の可能性を追い続けている、兼瀬哲治さんに講演していただきました。

兼瀬さんの永年のご活躍は、下記の2冊の本が参考になります。

兼瀬さんは、1980年代、旧清和村職員の時代から小水力発電の可能性に気づき、村内のどこかで出来ないかずっと構想をあたためてきましたが、なかなか進まず・・・。1999年に村長に当選して以後、「道路から発電所へ」を掲げて、2004年に「清和水力発電所」の完成に尽力された方です。

12/9の写真を紹介します。

兼瀬さん「平時のままなら消滅する過疎の村。危急存亡が続くなら生き残る村」「だから棚田を活用した小水力発電を」
「発想を変えれば、マイナスがプラスになる」「農村はエネルギーの供給地になる」
後半の質疑応答では、水利権について、あれやこれやと盛り上がりました。

コロナ期では人がたくさん集まる事を避ける状態が続き、講師の方の話を面前で聞くことが2年ほど途絶えてしまいました。オンライン配信、リモート会議が普通となり、画面越しに会話する事にも多少、慣れてはきましたが、やはり、こうして距離を近くして会話、懇親するのは貴重な事だと改めて思いました。

コロナ前は、イベントや講座を企画するたびに、参加者人数を気にしていたのですが、去年の全国大会を経験したうえでも、数よりも中身ではないかと思い始めました。

事を解決しようとする真剣さ、具体策はどこにあるのか等、現場に即した本音の質問は、こうした少人数の場でしか出てこないかも知れません。

第3回目は、2024年1月20日(土)、講師は金田剛一さんです。詳細はまた、改めてご案内します。               事務局:里中

連続講座「諦めない小水力」始めます~1回目11/25(土)

関西広域小水力利用推進協議会、秋から冬にかけての座学企画です。

小水力発電を事業化する場合、さまざまな手続きや合意形成が大変だと(小水力出来ない言い訳)を聞く事が多いのです。では、どうすれば出来るのか、どうすれば面白くなるのか、そのヒントを3回にわたって、実務者、経験者、熟練者の皆さんからスペシャルトークを伺おうと企画しました。

連続講座3回は、下記の予定を組んでいます。

〇11/25(土)午後1時半~5時
 「土木から語る小水力の面白さ」
 講師:小松俊夫さん、伴至さん(電力土木技術協会)

〇12/9(土)午後1時半~5時
 「地域から語る小水力の面白さ」
 講師:兼瀬哲治さん(一社)熊本県棚田発電等推進協会、元清和村村長)

〇2024/1/20(土)午後1時半~5時
 「水車から語る小水力の面白さ」
 講師:金田剛一さん(ハイドロ・エコロ技術士事務所
    全国小水力利用推進協議会元理事)

第1回目は11/25(土)の午後です。

参加希望される方は、下記のエクセルに記入して、事務局へご連絡お願いします。

たくさんの皆さんのご参加をお待ちしております。(事務局:里中)

23/9/30-10/1、高山市方面へ小水力発電所を訪ねる見学会、催行しました

関西広域小水力利用推進協議会は2012年9月に設立されましたが、初年度から各地の水力発電所を見学する1泊2日のバス旅行を続けてきました。

2012年=広島県東部と岡山県西部方面

2013年=岐阜県郡上市石徹白と白川村方面

2014年=兵庫県宍粟市と岡山県西粟倉村

2015年=三重県、和歌山県東部、奈良県南部、紀伊半島方面

2016年=滋賀県を経由して岐阜県石徹白(2回目)

2017年=富山県方面

2018年=鳥取県方面

2019年=徳島県、愛媛県方面

(2020-2022年コロナ禍で休止)

協議会活動も休止を余儀なくされたコロナ期を乗り切り、今年やっと国内ツアーを再開する事ができました。

この間、「小水力って期待してるほど、じゃんじゃん出来るものではないようだ」と当協議会から去る方もおられましたが、この2~3年に入会される会員さんの傾向を見ると(やはり小水力は底力があるかも)と、新たな期待を持っていただけるようになりつつあると感じています。

今回は第9回目ですが、岐阜県高山市方面を選びました。

昨年11月にお亡くなりになった野村典博さんがサポートしてきた福地温泉小水力発電所を、会員の皆さんと一緒に見ておきたいという事と、高山市方面には新しい発電所がたくさん出来ているので、注目のエリアでした。

参加者は、協議会会員以外にも首都圏から参加してくれた個人、企業の皆さん、合わせて23名でした。奥飛騨温泉郷のひとつである福地温泉の宿主さんや、奥飛騨発電会社事業主に皆さんには本当にお世話になりました。

バスが進入できない道では、参加者の方がマイカー、レンタカーを出して協力いただきました。過去にない参加者の皆さんの強力なサポートのお陰で、無事、3ヵ所の発電所見学が出来ました。

行程は以下の通りです。

<高山ツアーの行程>
9/30(土) ・朝8:30、京都駅八条口バスターミナルを出発

・12:30、高山駅で合流可能

・13:00~昼食

・14:30、平湯バスターミナルで合流可能

・14:40~福地温泉第一発電所、見学、事業者と懇談 福地温泉 山里物語 (yamazato-story.com)
・17:00~福地温泉「山里のいおり草円」、宿泊、懇親会 奥飛騨温泉郷 福地温泉 囲炉裏の旅館 山里のいおり 草円(そうえん)【公式ホームページ】 (soene.com)

10/1(日) ・8:40~一宝水発電所見学 https://www.youtube.com/watch?v=LJDS_AkfZE4
・9:30~11:30、安房谷発電所見学 https://www.youtube.com/watch?v=NQhnR9qPZUo

以下、写真の下にキャプションを付けて、高山ツアーを振り返ります。

9/30午後、福地温泉発電所の取水部、除塵機囲み建屋の前で説明する、事業主のお一人、坂下さん。

治山ダム水通し天端全面に腹付けしたチロリアン取水。ゴミ、石がすき間に詰まるので、こうやって除去すると作業の様子を見せてくれる、坂下さん。

除塵機から出てきた小石。こうした異物はできるだけ除塵機で取り、水車ランナーへの影響を少なくする仕組み。
建屋内では、事業主さんの許可を得て、この水車発電機の設計段階から関与してきた金田剛一さんが解説役を担ってくれました。水車はイタリア製。
建屋内の壁には、事業者の紹介や見学者の写真の中に、亡き野村さんの写真も掲示してありました
大きな発電所計画にたどり着く前に、野村さん達と一緒にマイクロ発電に挑戦して、小水力のステップアップをしてきた「福地くん1号」の建屋と横の上掛け水車。
周流水車の近くにある朝市、お祭り広場にて、坂下さんから事業計画の経過や苦労話を伺う。

事業主坂下さんのお宿「草円」で宿泊、夜の交流会をこちらで。多種多様な源泉のお風呂、地元ならではのお食事、古民家の雰囲気のある素晴らしいお宿でした。
10/1朝の見学先、一宝水発電所の放流の様子、予定に近い取水量との事。
昨日に続いて、2つの発電所の水車発電機設計に関わった金田さんからの解説。水車はチェコ製。
2つめの発電所、安房谷発電所の取水部。砂防ダムに腹付けチロリアン方式で、右岸側に引き込んで沈砂槽へ流しこんでいる。
沈砂槽から除塵機へ。正面に見えるスクリーンが除塵機のベルト。雪が降る、凍るという状態になるので、屋根を追加したとの事。雨が降っていたので、落ちないで!とヒヤヒヤ。
除塵機から出た葉っぱ、ゴミが貯まってきたら、この場所で軽トラに積みなおして搬出。作業の様子をやってみてくれているのは、事業主代表の志田さん。
安房谷発電所前で、再び金田さんの解説をいただく。
安房谷発電所制御盤の建屋前で、事業を開始した時のエピソードやこれまでの経過をお話しいただいた志田さん。今後、3つ目の発電所計画が進行中だが、「最初は僕らも素人でした」と謙虚さを伝えてくれる。

3年ぶりの高山ツアーでしたが、今回の参加者の特徴は「ホンキで水力発電所を造る」事を目指している人達が多かった事です。

そのゆえでしょうか、事業主さんの説明に対する質問には、具体的、リアリティあるものが増えたように感じました。

終了後にとったアンケートでも「ぜひ、こうした見学会を続けて欲しい」との希望がありました。1泊2日、20名を超す人達を集めてのバス旅行の企画は、結構、準備が大変ですが、過去の経験も活かして、これからも続けていきたいと気持ちを新たにしました。

小水力を目指す人達にとって「実際の発電所を見る」事は得難い場面となります。完璧な発電所はたぶん、どこにもなくて、何がしらの不具合や計画倒れの部分があるでしょう。2012年FIT施行後ににわかに立ち上がった民間事業者が建設してきた、小水力発電所が多い中、今でも悩みつつ事業を続けているところもあるかも知れません。

少しでも完成度を上げるために、よりたくさんの発電所を見る、事業者さん達の努力と苦労、その後にたどり着く達成感に謙虚に耳を傾ける事の大切さを再認識しました。

「どんな発電所も見る価値はある」との信念を胸に、さて、来年はどこに行きましょうか、と新しい発電所竣工を待ちたいと思います。

最後に、高山ツアーにご参加いただいた皆様、ご協力くださったすべての関係者の方々に改めてお礼申しあげます。ありがとうございました。文責:里中(事務局)

兵庫県2つの発電所、見学会(’23/7/22)

2020年~22年まで、コロナの影響を受けてさまざまな企画もの、イベントを中断せざるを得ない状態が続きましたが、今年からは6月総会の活動方針を受けて、少しずつ協議会本来の取り組みを再開していく事になりました。

その第1弾として、関西エリアにおいて協議会会員が関与した小水力発電所の見学会を開催しました。2ヵ所とも低圧連系規模ですが、両方とも長い時間をかけて案件形成をし、運転開始にこぎつけた発電所です。

日帰りのバス視察会は初めてでしたが、協議会会員のみならず、関西エリア以外、東京からのご参加もあり、バス定員いっぱいで催行しました。

運営委員の森山さん、一樋さんが報告レポートを書いてくれましたので紹介します。ご参加できなかった方も、当日の様子を感じてください。 (事務局:里中)

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○六甲川発電所レポート   (運営委員:森山和彦さん)

構想から10年かけて都市で実現、六甲川水車新田小水力発電所の挑戦!

 2023年7月22日(土)に神戸市灘区の「六甲川水車新田小水力発電所」の見学会に参加しました。関西広域小水力利用推進協議会としては、コロナ期を経て3年ぶりの見学ツアーでした。参加者は協議会スタッフを含めて27名。

発電所は六甲ケーブル下駅から六甲川にかかる大月大橋を渡り、住宅街を抜けて5分ほど歩いた場所にあります。こんな住宅街のただ中に小水力発電所があることに驚きです。

 

全国でも珍しい都市型小規模水力発電所を六甲川に設置したのは“NPO法人PVネット兵庫グローバルサービス”。2013年設立の同グループが目指すのは“市民レベルでの脱炭素地域づくりと地域資源の有効活用”です。

発電所の立地する“水車新田”の地域は、その名前の由来にもある通り江戸から大正時代には、菜種油の搾油や酒米の米つきのために多くの水車が稼働していました。この水車跡地を発電所として復活させようとの構想からNPOの皆さんのチャレンジが始まっています。

総工費は6,300万円。有効落差27m、最大使用水量0.11㌧、最大出力は19.9kwです。FIT認定で売電する発電量は、年間12万6,000kwhを見込んでいます。しかし、後述する取水に課題があるため想定ほどの発電ができず、売電収入も思ったほど得られていないとのことです。

発電所の説明をしてくださったNPOのメンバーで、施工会社でもある“株式会社みつば電気”会長の岡本さんは「投資回収できるかどうかギリギリのところで奮闘している」とのことでした。説明する岡本さんからは、あふれる熱意が伝わってきます。

発電所にもコスト削減の工夫が見て取れます。発電機は、ポンプと同じ部品を使うことができるため比較的安価なポンプ逆転水車を使用。

発電機を格納する建屋はなく、屋根と柵の簡易な施設に水車発電機や制御盤が設置されています。

発電機設置後も苦労があったそうです。発電所から放水される水の音が大きいとの苦情が近隣住民から寄せられました。この課題に対しては、発電所を数カ月停止し、放水音が出ないようにする騒音対策のための追加工事を行ったそうです。こういった騒音問題は住宅地ならではの課題だと感じました。

導水路は森の中を縫うように延びています。森のあちこちには鳥やミツバチの巣箱が設置されています。こういった森づくりの取組からは、NPOメンバーの方が熱心に地域づくりに取り組まれていることが伺えます。売電収益は、こういった地域の環境保全や発電所の維持管理に役立てられているようです。

 

取水は砂防ダムから流れ落ちた水が溜まった滝つぼからのサイフォン方式です。この取水方式では、河川流量が少ない季節に取水し続けると滝つぼの水が少なくなってしまいます。なぜなら、滝つぼに供給される水の量よりも発電に利用される水の量のほうが多くなる場合があるからです。つまり、滝つぼの水を流量以上に取りすぎてしまうのです。

こういった事情から河川流量が少ない時期の発電機は、停止と起動を繰り返す間歇(かんけつ)運転をしています。これが想定ほどの発電量が得られない大きな原因になっているのです。

とはいえ、運転起動時は、有効落差に見合った流量を取水することになるので、ほぼ定格出力で発電しているそうです。低出力で連続運転するよりも間歇運転のほうがトータルの発電量は増えるということです。

今回、現地で私たちを案内してくださったNPOメンバーの方々は、みなさん意欲的に小水力発電を活かした地域づくりに熱心に取り組んでおられました。事業主体がNPOということもあり十分な資金を用意できない中で、様々な工夫やアイデアで乗り越えてこられたように見受けられました。

小水力発電は地域や環境を良くするための手段であると感じさせて頂けた学びの多い事例でした。

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○黒土川発電所レポート  (運営委員:一樋和美さん)

7月22日(土)に関西協議会として、この春から稼働した兵庫県宍粟(しそう)市千種(ちくさ)町にある「黒土川発電所」の見学会に参加してきました。

全体では25人乗りのバス一台定員いっぱい、と神戸市六甲川発電所のみ現地に直接行かれた方1名の参加でした。

JR京都駅から出発し、途中阪急六甲駅で集合していたメンバーを乗せ、午前中に六甲川発電所を見学後、車内でお弁当を食べながら宍粟市に向かいました。

道中で参加者の自己紹介なども行われ、協議会として久しぶりのツアー再開で、みなさんとても期待されている感じでした。

バスは中国道山崎インターから下道を約50分走り、道の駅ちくさで2回目のトイレ休憩でしたが、夏休みの関係もあり道の駅は大変賑わっており、道路脇の千種川では遊泳などの川遊びをされる若い家族連れなどもいるようでした。(ちなみに千種川は、河口まで大きなダムがなく本州に残された数少ない清流の一つ、と言われています。河口は播州赤穂)

そこから支流の黒土川に沿って急な坂道(一応県道)を登り、地元の名所となっている滝横辺りまで一旦バスで移動しました。

そのあと、設立に向けて奮闘なされた地元の有志(黒土川小水力発電合同会社社員)からの案内で、取水口〜発電所建屋(〜バス乗車地点)まで1.5kmほどを徒歩で見学しました。

黒土川の水量は、数日前までの雨で少し水量が多いだろうとのことでしたが、設置された堰堤などにも支障はなく、ほぼ期待した通りの水量を配管に流すことができている、とのことでした。

私が特に関心を持っていたところは取水口で、「コアンダ式」の取水方法が、全国で初めて?の事例として採用されているとのことでした。

その網目となる「スクリーン」は0.6mm以下の砂塵しか通さない、という優れものだったと思います。

発電所建屋に設置された水車発電機はオーストリア製で、合同会社を一緒に設立された、E-SERECTさんの提案とのことでした。

横軸2射ペルトン水車、水量0.1立米/秒、有効落差50.1m、出力規模は39.6kW(最大)で全て売電とのことです。

この売電による収益は、地元黒土地域(自治会)活動資金として活用し、地域の小学生をはじめとする環境教育などにも活用したい、とのことでした。

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設置の構想を持ってから7〜8年経つとのことですが、その間に地元住民の合意、資金の確保、水利権のクリアなど様々な苦労を乗り越えられて実現されたことは、ここでは語り尽くせないものだろうと思います。今後機会があればゆっくりと、盃を傾けながら拝聴して見たいと思っています。

(従前より、少し宍粟市との様々な交流があった者からの報告でした(笑))

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 長い時間をかけて計画して、何度も難題にぶちあたり、その都度、課題をクリアしてきた2つの発電所です。無事、発電所建設が完成しても、常時運転稼働するには、毎日の見守りが必要です。造るまでの苦労とはまた違う努力を重ねている2つの発電所でした。

 最後に、この2つの発電所は、両方ともに兵庫県の「地域創生!再エネ発掘プロジェクト」の支援(補助金、無利子貸付)を受けています。たとえ低圧連系規模でも、地域住民・市民の力だけでは及ばないところを、兵庫県では小水力のみならず再エネ全体に支援を続けています。こうしたバックアップが大きく好影響している事も申し添えておきます。

 次の見学ツアーは、秋、9/30-10/1、岐阜県高山方面を予定しています。ご関心のある方は、下記、当協議会の方へお問い合わせをお願いします。

       関西広域小水力利用推進協議会メルアド=info@kansai-water.net

協議会専用携帯電話=080-7051-5830(里中)

6月10日、第12回総会を開催します

2012年設立しました関西広域小水力利用推進協議会は、今年の通常総会で第12回目を迎えます。

設立総会が2012年9月で、9ヶ後の2013年5月に第2回というカウントをしていますので、正確に活動年数を言うと10年と9ヶ月と言う状態です。

下記のように前半で総会、後半で事例発表会をします。開催の様子はハイブリッド配信しますので、会員の方はメーリングリストで配信した、Googleフォームに6/5までに参加希望エントリーしてください。

2020~22年のコロナ期にあって、思うような活動が出来ませんでしたが、今年は少しずつ活動を再開したいと考えておりますので、引き続きのご支援をよろしくお願いいたします。

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2023年6月10日(土)京都商工会議所会議室

  関西広域小水力利用推進協議会第12回通常総会

               (会場参加とオンライン参加の同時進行で) 

  • 14:00開会 第12回通常総会
  • 15:20~16:30 
○事例発表 『兵庫県香美町における小水力発電事業』
発表者:井澤 武史さん   
所属:株式会社鴻池組 土木事業総轄本部 環境エンジニアリング本部環境イノベーション部長

  〇井澤さんを交えて、質疑応答、意見交換など

  • 16:40~

〇事務連絡など

  • 16:50閉会 

 ☆お願い

  • 会場参加とオンライン参加でのハイブリッド方式です。Googleフォームにエントリされた方に、6/8までにURL送付予定。MLに入ってない方は、早急に事務局へ連絡をください。
  • 会場ではマスクの着用は、個人のご判断でお願いします。
  • 17:00までに完全に片付けを終えて部屋を出ないと行けませんので、会の進行と終了後の片付けにご協力ください。
  • 会場=京都商工会議所(経済センタービル7階)
  • https://www.kyo.or.jp/kyoto/kyosho/access.html

3/9(木)「野村典博さんを語り継ぐ集い」

昨年11/21にお亡くなりになった野村さんは、関西協議会とはご縁の深い方でした。野村さんが2015年に関西協企画で講演してくれたお話は、当協議会の設立趣旨に添ったものを着実に実践している姿でした。岐阜だけでなく、関西エリアでも「自然エネルギー学校」を通して、たとえ小さな発電でも「自分の手で造る」そして、その先に売電規模があるのならそれも射程に入れて、地域住民の主体性を重んじて実践していく、というスタイルを、野村さんだけにしか出来ない「神話」にしてはいけないと思っています。野村さんはどんな小水力の未来を描いていたのか、一番親しい仲間である平野さんからお話を伺い、「自然エネルギー学校/那智勝浦町」の東条さんから映像を提供いただき、野村さんとの思い出を共有しながら、語り継ぐ場を持とうと思います。

短時間ではありますが、平野さんが京都で講演されるのは久しぶりですので、会員の方のみならず、多くの方にぜひ、ご参加いただきますようご案内いたします。

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「野村典博さんを語り継ぐ集い」

〇日時=2023/3/9(木)18:30-20:00

〇場所=ウィングス京都(京都市中京区)2階 A+Bセミナー室

参加費=無料

話題提供:平野彰秀さん(郡上市石徹白)

写真動画提供:東条雅之さん(那智勝浦町)

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石徹白の平野さんは皆さんもご存知のように、郡上市石徹白地区という小さな集落で「小水力発電を起爆剤に」ご家族と一緒に、まちおこしを続けてこられた方です。

平野さんは、「ふるさとづくり大賞」を受賞されていて、23/2/10、下記のように受賞式があります。

総務省|報道資料|令和4年度ふるさとづくり大賞受賞者の決定 (soumu.go.jp) <https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01gyosei09_02000130.html>

20年以後のコロナ情勢があり、平野さんのお話はオンラインでしか聞けなかったですが、今回は久しぶりに京都にお越しいただき、ナマの平野さんに接する場となります。

「野村さんの一番弟子」とも呼べる平野さんは今も、亡き野村さんのやり残した小水力事業案件形成を頑張っているはずです。

那智勝浦町の東条さんからは映像を提供していただき、野村さんの姿や声を心に刻もうと思います。

多くの皆さんのご参加をお待ちしております。よろしくお願いいたします。

関西広域小水力利用推進協議会:問い合わせ先=080-7051-5830(里中)

全国小水力発電大会in京都、無事終わりました。

ブログの更新が遅れていましたが、皆様のご協力のお陰で「第7回全国小水力発電大会in京都」が11/10-12、無事終えることができました。

2021年の春以後、特に10月の富山大会以後、たくさんの皆さんに助けていただきました。本当にありがとうございました。

3日間を通しての参加者は、1000名を超えています。

展示会場や各イベントを包んでいたあの熱気は、全国から参加された皆さんが、小水力発電への期待に満ちていた証しだとと思います。

「小水力、さぁ関西で!」と2012年に当協議会を設立した時以来、この10年間、地道に活動を続けてきて本当に良かったと、理事、運営委員一同、実感しています。

写真で様子をお伝えするために、今、収集していますが、大会の様子を動画録画したものがアーカイブされていますので、そのURLを先にお伝えします。

11/10(木)の開会式から講演会、シンポジウムの前に上映された、産業大学の学生さん制作のスライドショーもあります。

https://kansai-water.net/taikai/archive/

全部の動画を見るには時間がかかりますが、年末年始のお休みを利用して、どうぞ京都大会の雰囲気を感じていただけたらと願います。

企業プレゼンの動画アーカイブがまだできていませんが、順次、アップしていく予定です。

引き続き、ご期待ください。             事務局:里中