第10回小水力発電を訪ねる旅~中国山地東部3つの発電所を巡る(2024/10/19-20)

関西広域小水力利用推進協議会が主催する、各地の発電所を見学する旅、今年で10回目を迎えました。

2018年に「鳥取ツアー」をして以来、近隣ではありますが、今年は、鳥取県南部や岡山県東部、兵庫県北部エリアを選んでみました。1日目の最初は、西粟倉村が建設した2つ目の水力発電所「みおり発電所」。村営かのようにみえますが、事業主体は「あわくら水力発電株式会社」というSPCです。

午後は、西粟倉村からそんなに遠くない、鳥取県八頭郡智頭町に移動して「富沢発電所」を訪問しました。

(参考資料:水のプログラム 中国地方の水力発電所)

http://mizupro.starfree.jp/hydro_power/index.html#01

2日目は、今年5月に運転開始したばかりの「小長辿(こながたわ)発電所」です。

10/19日の見学の様子を、参加された窪田さん(株式会社フジタ)、10/20を遠藤さん(神戸市)がレポートをくださいましたので、以下、ご紹介します。

************************

(10/19:窪田さん)

1.はじめに

 10月19日、新横浜7時43分発ののぞみ297号で姫路へ。関西広域小水力利用推進協議会の見学会は、昨年7月の「兵庫県の2つの発電所」、同年9月の「高山方面の小水力発電所」に次いで3回目です。

 (株)フジタで小水力発電事業に関わって2年半になりますが、実際に運転されている発電所を見学し建設・運転管理の苦労話を伺う機会は限られているので、関西小水力協議会の見学会は貴重な機会でいつも楽しみにしています。

 10時55分、京都からのバスに二次集合部隊が合流し、総勢23名で一路岡山県西粟倉村を目指します。

2.西粟倉第2発電所「みおり」

 岡山県西粟倉村の道の駅「あわくらんど」で上山副村長と待合せ、「西粟倉第2発電所(最大出力199kW、使用水量0.4㎥/秒、有効落差66.43m)」に向かいました。道の駅に隣接し、農業用水を活用し親水公園と組み合わせた「影石発電所(最大出力5kW、使用水量0.06㎥/秒、有効落差13.2m)」があり、西粟倉村の小水力発電に対する意識を実感します。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: image.png
影石発電所
発電所上の親水公園

 見学先への道沿いには改修が終わった「西粟倉第1発電所(290kW)」も見えました。

 西粟倉第2発電所は公募した愛称が「みおり」といい、「西粟倉に流れる自然のめぐみとしての『水』が『織』りなす『利』の可能性を大切にする」という「水織利」の思いが込められているとのことでした。

 先ずは取水口地点へ。既設床固工を流用し、側方から取水する形で水槽、スクリーン・除塵装置、沈砂池と続き、ダクタイル鋳鉄管の水圧管路につながります。

 上山副村長のお話しでは、地権者の理解を得ながら取水口位置を選定したうえで、村が管理する普通河川に設置しているので様々な取り組みができたそうですが、水槽や沈砂池の形状・容量など、まだまだ改良の余地はあるとの事でした。これから新規に開発を目指している我々にとって、非常に貴重なお話しです。

取水口全景、下流側より
取水堰堤に流用した既設床固工

 水圧管路は川沿いに延びる村道に縦断埋設されています。この点も、新規に開発を計画する自治体によってはなかなか許可をいただけず、村主導の事業のメリットを感じました。この管路には経済性を追求して、作用する水圧に応じて上流側はダクタイル鋳鉄管、下流側はダクタイル鉄管が使用されていますが、水路予定地の地盤の状況によりルートを見直すと鋳物を新たに作り直す必要があり、工程確保に苦労されたとのお話しでした。

 取水口から約1km下流に発電所があります。発電所の対岸には村の上水道取水設備(井戸からの揚水を利用)があり、下流には農業用水の取水口があります。上水道は地下水を揚水するので直接は関係ないが、水不足になった時にも問題が生じないように上流で放流することにしたとのお話しでした。発電計画には様々な配慮が必要と改めて実感しました。

西粟倉第2発電所全景
発電所対岸の上水道取水設備

なお下流の農業用水取水口には低落差用の1.5kWのピコ水力発電所も設置されていました(見学当日は発電機が取り外されており、発電量はゼロでした)。

みおり発電所下流の農業用水取水口
取水口に設置されたピコ水力(取外し中)

 水車発電機は横軸ターゴ水車です。一般的にこの規模の発電所ではフランシス水車が使用されるケースが多いのですが、西粟倉第2発電所では河川流量変動に応じた運転範囲の広い横軸ターゴ水車を採用したとの説明をいただきました。発電所内には、ノズルの先端で流量を調節するニードル・チップの摩耗交換品が展示されていました。ステンレス鋼の塊であるニードル・チップが水流に混じった土砂で削られており、水の力を実感しました。

発電所内、ターゴ水車全景
ノズル先端のニードル・チップ交換品

上山副村長からは、西粟倉第2発電所で作った電気を「同期発電機の採用を指示する中国電力へ連系するか、4kmの自営線とキュービクルの新設が必要な関西電力へ連系するかで非常に苦労した」といったホンネの話や、「西粟倉村はこれまで『脱炭素・環境保全』から再エネ開発に取り組んできたが、これからは『生物多様性』がキーワード。生物多様性を追求する中で小水力開発も位置付けていく」といったお話しも伺いました。「百年の森林構想」を推進してこられた当事者だからこその説得力を感じました。

 見学者からの質問にも率直にご回答をいただき、上山副村長に深く御礼を申し上げます。西粟倉村の生物多様性への取組みの成功を心より祈念いたします。

3.富沢発電所

 西粟倉村から50分ほどで次の見学先、鳥取県智頭町の「富沢発電所(最大出力152kW、使用水量0.4㎥/秒、有効落差41.74m))」に到着しました。ここは富沢電化農業協同組合が発電事業を行い、管理運営は京葉ガスエナジーソリューションが行っています。現場では、同組合の代表理事で、運転を行っている京葉ガスソリューション株式会社の社員でもある建部様が対応してくださいました。

 富沢発電所は、旧発電所は昭和28年(1953年)に120kWの町営発電所として建設されたが、FIT認定を得て改修し152kWとして2022年3月に運転を開始しています。

富沢発電所全景
横軸フランシス水車

発電所には横軸フランシス水車、発電機、制御盤等が設置されていますが、その前に大型画面をセットしていただき、取水口や導水路経過地をドローンで撮影した映像で説明してくださいました。

 旧発電所は建部様の曽祖父がご尽力され町営発電所として建設・運転されてきましたが、1970年代前半に組合に移管され、その後は建部家の皆様が代々運転管理されてきたとの事、発電所更新の話が出る中でお父様も逝去され、建部様が地元に戻って改修工事を完成されて現在に至っているとのお話しでした。

 建部家歴代の思いが詰まった発電所を見学させていただき、また現在お勤めの京葉ガスエナジーソリューション株式会社では鳥取県内11カ所を含む西日本エリアの発電所を管理して、出水時対応や各種補修作業は社員が直営で対応しておられるとの話も伺い、建部様をはじめとする関係者の皆様の発電所に対する深い愛情を感じた次第です。富沢発電所が、建部家の孫子の代まで順調に運転を継続されることを願っております。

4.おわりに

 2日目の小長辿発電所も含めて、今回も非常に充実した見学会でした。見学先では、発電所を建設し運転管理されている当事者の皆様が丁寧に説明し、率直に質疑にご回答をくださいました。皆様の小水力発電に対する熱い思い、愛情を感じました。

 またバスの車内、夜の懇親会を通して、関西広域小水力利用推進協議会の皆様とより深く交流し、貴重な人的ネットワークを築かせていただく事ができました。誠にありがとうございます。

 できる事なら、協議会の皆様にご見学いただけるような小水力開発を東日本エリアで推進していきたいと意を強くしたところです。引き続きよろしくお願いいたします。

********************************

(10/20:遠藤さん)

今年6月に入会しました新会員の遠藤から2日目(10/20)の報告をさせて頂きます。

雨上がりの少し肌寒い2日目は、㈱鴻池組さんが兵庫県美方郡香美町小代地区で運営する「小長辿(こながたわ)発電所」を、午前中いっぱい掛けて見学させて頂きました。施設の導入から維持管理まで、地域の住民や事業者の方々と密接に連携しながら取り組まれており、令和6年5月に運転を開始した出来立ての発電所です。そして、コーポレートスローガンの「まじめに、まっすぐ」をそのまま形にされた小水力発電所だな、というのが見学後の正直な印象です。

 過疎化が進む地域の危機感と将来への思いをくみ取りつつ、安全で脱炭素に貢献する地域資源を活用した再生可能エネルギーを拡大目指されています。赤字にはならないまでも、決して儲けが多いとは言えない小水力発電の中長期計画を立てたうえで、チャレンジされているということが、㈱鴻池組の井澤環境イノベーション部長の明るく丁寧な説明を聞き、よく分かりました。

取水と発電機の有効落差が209mもあり、アクセス道路が細くてバスが通れないため、2班に分かれての現場見学となりました。流れ込み式の最大出力199kWの真新しいイタリア製の6射式縦軸ペルトン水車と発電機は、水量が0.115㎥/sと比較的少なめなためか音は大きくなく、建屋の外ではほとんど気にならないレベルでした。訪問時には、水車の6射中5射が働き約180kWの電力を生み出してくれていました。

取水施設と沈砂槽
発電所建屋と圧力管
6射縦軸ペルトン水車と発電機

今回の一連の見学を通じて、自分なりに当発電所の5つのストロングポイントを見て感じ取ることができましたので、以下のとおりご紹介させて頂きます。

➀一つ目は、「取水施設の見学のため約200mの落差分をつづら折りの険しい坂道を上り下りすることで、急峻な地形をダイナミックに活用している小水力発電であることが体感できること」です。

標高約600mの山上で既に廃村となったかつての旧小長辿集落の町道から20mほど入った農業用水の取水跡地に取水施設が整備されています。そこから数百m南東へ水平方向に塩ビ管で導水後、急な坂道である非舗装の町道沿い1.2kmにポリエチレン管が埋設され斜面を下っているところを山の上から確認できます。冬場には、2mもの積雪があり、アクセス道は無人地帯で役場が除雪しないため、何かあればかんじきを履いて2時間以上かけて取水施設まで雪の中を登るとのこと。来春まで取水部の遠隔監視カメラが壊れないことを祈ります。

②二つ目は、「地域の方々へのいい意味での忖度ができていること」です。

地元の香美里山再生協議会の方々が、県の補助を活用し、流況調査等を実施したものの資金確保や技術的な課題等で壁にぶつかっている中、人づてに㈱鴻池組さんに事業化の話が回って来て、再生可能エネルギーの導入に前向き、かつ地元香美町での工事の実績がある土木会社として、実施を決めたとのこと。住民説明や漁協への協力依頼などには、協議会のメンバーが㈱鴻池組さんと一緒になって取り組まれ、全面的に事業化に協力したとのこと。こうした経緯を踏まえ、設置工事や維持管理は地元の業者に委託するとともに、社員等関係者は、地元の民宿等を積極的に活用するなど、地元への還元を常に意識しておられました。さらには、山間部をアップダウンで走り抜く「みかた残酷マラソン」に社員が参加されており、地元との交流も大事にされています。とてもいい忖度ができていると思います。 

③三つ目は、「(井澤部長のお人柄によるものかも知れませんが・・)うまくいっている点と、課題(うまくいってない点)を包み隠さず教えて頂けること。そして現在、課題の改善に向けて対応中のことも詳しく説明頂けること」です。

うまくいっている点としては、6射式のペルトン水車のため発電できる流量の幅が広く、稼働率を高められたことや、遠隔監視カメラに加えて濁度計を新たに設置し、大雨の直後は濁度を指標に1,2時間の一時停止を遠隔で操作することで、ノズルが詰まる原因の砂利の混入を防止できるようになったとのことです。

一方、取水口の形状や沈砂池の容量、水平方向の導水管の砂利の排出等に課題があり、特に重要な取水口ではコアンダー方式を参考にした3つ目の新たなスクリーンに交換を予定されているとのこと。このほか、発電所裏側の導水管斜面における大雪時の倒木リスクや海外製の部品の納期などの課題もあり、今後対応を考えたいとのこと。日々改善を重ねておられる姿勢に、敬服いたします。

④四つ目は、「当発電所や隠岐の島での再エネの導入経験を活かし、さらに近隣の河川に小水力発電を設置することができないか、前向きに検討されていること」です。

久須部渓谷だけでも、3本の川が合流しており、地形を活かした発電を数カ所でできるのではと、調査を進めておられるとのこと。近隣に複数の小水力発電が稼働した場合、定期的な点検をはじめ維持管理を効率的にできるだけでなく、視察者を多く呼び込むことにもつながります。今後の展開に期待です。そのうち一つぐらいは、住民出資型の事業になるともっと嬉しいですが・・。

⑤五つ目は、「久須部渓谷の要滝・三段滝という景勝地のすぐ近くに当発電所が位置し、見学者は、滝見亭という食事処で地元のご馳走を味わえること」です。

見学後の昼食は、滝見亭の2階の座敷で、山菜、あまごの塩焼き、天然の舞茸の天ぷら、但馬牛の陶板焼き、むかごの塩ゆでなど、地元の食材を堪能させて頂きました。歩いて1,2分のところには、見事な滝が2つ並んでいて、落差も水量もなかなかのものでした。当発電所の放流は滝の上流側に戻しており、観光資源の滝の水量や景観に影響を与えない姿勢は、地元ファーストの表れだと思います。小水力発電の設置をきっかけに、小代地区が観光×環境(再エネ(小水力やバイオマス)、生物多様性(イヌワシやオオサンショウウオが生息))で持続可能な地域であることを訪問者に感じてもらえるといいですね。

久須部渓谷、要滝
三段滝
食事処 滝見亭

以上、小水力発電に魅力と難しさの両方を感じている者にとって、大変為になる見学でした。対応いただいた㈱鴻池組さん、西粟倉村さん、KGESさんへ心から感謝をするとともに、このようなツアーを企画頂いた里中事務局長をはじめとする関西広域小水力利用推進協議会の役員の皆さまにお礼を申し上げます。

************************

無事、二日間の旅を終えて、姫路駅から帰路につく方、最終の京都駅解散まで、ほぼ予定通りの行程を終えることができまた。ありがとうございました。

解散後、皆さんにアンケートを求めましたところ、多くの方から「こうした見学会を続けて欲しい」とのお声をいただいております。

日程設定は「土日とは言わずに」という方もおられますし、「飛行機を使っても構わない」という方もおられて、来年度以後の見学先、選択肢の幅は広がりそうですが、その分、計画に時間がかかりそうですね。今後の計画の参考にさせてもらおうと思っています。

関西協議会の次のイベントは未定ですが、12月にこじんまりした講演会を企画しようと思っています。その時はまた、お呼びかけしますので、皆様、ご参加のほどよろしくお願いいたします。                      (事務局;里中)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA