23/9/30-10/1、高山市方面へ小水力発電所を訪ねる見学会、催行しました

関西広域小水力利用推進協議会は2012年9月に設立されましたが、初年度から各地の水力発電所を見学する1泊2日のバス旅行を続けてきました。

2012年=広島県東部と岡山県西部方面

2013年=岐阜県郡上市石徹白と白川村方面

2014年=兵庫県宍粟市と岡山県西粟倉村

2015年=三重県、和歌山県東部、奈良県南部、紀伊半島方面

2016年=滋賀県を経由して岐阜県石徹白(2回目)

2017年=富山県方面

2018年=鳥取県方面

2019年=徳島県、愛媛県方面

(2020-2022年コロナ禍で休止)

協議会活動も休止を余儀なくされたコロナ期を乗り切り、今年やっと国内ツアーを再開する事ができました。

この間、「小水力って期待してるほど、じゃんじゃん出来るものではないようだ」と当協議会から去る方もおられましたが、この2~3年に入会される会員さんの傾向を見ると(やはり小水力は底力があるかも)と、新たな期待を持っていただけるようになりつつあると感じています。

今回は第9回目ですが、岐阜県高山市方面を選びました。

昨年11月にお亡くなりになった野村典博さんがサポートしてきた福地温泉小水力発電所を、会員の皆さんと一緒に見ておきたいという事と、高山市方面には新しい発電所がたくさん出来ているので、注目のエリアでした。

参加者は、協議会会員以外にも首都圏から参加してくれた個人、企業の皆さん、合わせて23名でした。奥飛騨温泉郷のひとつである福地温泉の宿主さんや、奥飛騨発電会社事業主に皆さんには本当にお世話になりました。

バスが進入できない道では、参加者の方がマイカー、レンタカーを出して協力いただきました。過去にない参加者の皆さんの強力なサポートのお陰で、無事、3ヵ所の発電所見学が出来ました。

行程は以下の通りです。

<高山ツアーの行程>
9/30(土) ・朝8:30、京都駅八条口バスターミナルを出発

・12:30、高山駅で合流可能

・13:00~昼食

・14:30、平湯バスターミナルで合流可能

・14:40~福地温泉第一発電所、見学、事業者と懇談 福地温泉 山里物語 (yamazato-story.com)
・17:00~福地温泉「山里のいおり草円」、宿泊、懇親会 奥飛騨温泉郷 福地温泉 囲炉裏の旅館 山里のいおり 草円(そうえん)【公式ホームページ】 (soene.com)

10/1(日) ・8:40~一宝水発電所見学 https://www.youtube.com/watch?v=LJDS_AkfZE4
・9:30~11:30、安房谷発電所見学 https://www.youtube.com/watch?v=NQhnR9qPZUo

以下、写真の下にキャプションを付けて、高山ツアーを振り返ります。

9/30午後、福地温泉発電所の取水部、除塵機囲み建屋の前で説明する、事業主のお一人、坂下さん。

治山ダム水通し天端全面に腹付けしたチロリアン取水。ゴミ、石がすき間に詰まるので、こうやって除去すると作業の様子を見せてくれる、坂下さん。

除塵機から出てきた小石。こうした異物はできるだけ除塵機で取り、水車ランナーへの影響を少なくする仕組み。
建屋内では、事業主さんの許可を得て、この水車発電機の設計段階から関与してきた金田剛一さんが解説役を担ってくれました。水車はイタリア製。
建屋内の壁には、事業者の紹介や見学者の写真の中に、亡き野村さんの写真も掲示してありました
大きな発電所計画にたどり着く前に、野村さん達と一緒にマイクロ発電に挑戦して、小水力のステップアップをしてきた「福地くん1号」の建屋と横の上掛け水車。
周流水車の近くにある朝市、お祭り広場にて、坂下さんから事業計画の経過や苦労話を伺う。

事業主坂下さんのお宿「草円」で宿泊、夜の交流会をこちらで。多種多様な源泉のお風呂、地元ならではのお食事、古民家の雰囲気のある素晴らしいお宿でした。
10/1朝の見学先、一宝水発電所の放流の様子、予定に近い取水量との事。
昨日に続いて、2つの発電所の水車発電機設計に関わった金田さんからの解説。水車はチェコ製。
2つめの発電所、安房谷発電所の取水部。砂防ダムに腹付けチロリアン方式で、右岸側に引き込んで沈砂槽へ流しこんでいる。
沈砂槽から除塵機へ。正面に見えるスクリーンが除塵機のベルト。雪が降る、凍るという状態になるので、屋根を追加したとの事。雨が降っていたので、落ちないで!とヒヤヒヤ。
除塵機から出た葉っぱ、ゴミが貯まってきたら、この場所で軽トラに積みなおして搬出。作業の様子をやってみてくれているのは、事業主代表の志田さん。
安房谷発電所前で、再び金田さんの解説をいただく。
安房谷発電所制御盤の建屋前で、事業を開始した時のエピソードやこれまでの経過をお話しいただいた志田さん。今後、3つ目の発電所計画が進行中だが、「最初は僕らも素人でした」と謙虚さを伝えてくれる。

3年ぶりの高山ツアーでしたが、今回の参加者の特徴は「ホンキで水力発電所を造る」事を目指している人達が多かった事です。

そのゆえでしょうか、事業主さんの説明に対する質問には、具体的、リアリティあるものが増えたように感じました。

終了後にとったアンケートでも「ぜひ、こうした見学会を続けて欲しい」との希望がありました。1泊2日、20名を超す人達を集めてのバス旅行の企画は、結構、準備が大変ですが、過去の経験も活かして、これからも続けていきたいと気持ちを新たにしました。

小水力を目指す人達にとって「実際の発電所を見る」事は得難い場面となります。完璧な発電所はたぶん、どこにもなくて、何がしらの不具合や計画倒れの部分があるでしょう。2012年FIT施行後ににわかに立ち上がった民間事業者が建設してきた、小水力発電所が多い中、今でも悩みつつ事業を続けているところもあるかも知れません。

少しでも完成度を上げるために、よりたくさんの発電所を見る、事業者さん達の努力と苦労、その後にたどり着く達成感に謙虚に耳を傾ける事の大切さを再認識しました。

「どんな発電所も見る価値はある」との信念を胸に、さて、来年はどこに行きましょうか、と新しい発電所竣工を待ちたいと思います。

最後に、高山ツアーにご参加いただいた皆様、ご協力くださったすべての関係者の方々に改めてお礼申しあげます。ありがとうございました。文責:里中(事務局)