兵庫県2つの発電所、見学会(’23/7/22)

2020年~22年まで、コロナの影響を受けてさまざまな企画もの、イベントを中断せざるを得ない状態が続きましたが、今年からは6月総会の活動方針を受けて、少しずつ協議会本来の取り組みを再開していく事になりました。

その第1弾として、関西エリアにおいて協議会会員が関与した小水力発電所の見学会を開催しました。2ヵ所とも低圧連系規模ですが、両方とも長い時間をかけて案件形成をし、運転開始にこぎつけた発電所です。

日帰りのバス視察会は初めてでしたが、協議会会員のみならず、関西エリア以外、東京からのご参加もあり、バス定員いっぱいで催行しました。

運営委員の森山さん、一樋さんが報告レポートを書いてくれましたので紹介します。ご参加できなかった方も、当日の様子を感じてください。 (事務局:里中)

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○六甲川発電所レポート   (運営委員:森山和彦さん)

構想から10年かけて都市で実現、六甲川水車新田小水力発電所の挑戦!

 2023年7月22日(土)に神戸市灘区の「六甲川水車新田小水力発電所」の見学会に参加しました。関西広域小水力利用推進協議会としては、コロナ期を経て3年ぶりの見学ツアーでした。参加者は協議会スタッフを含めて27名。

発電所は六甲ケーブル下駅から六甲川にかかる大月大橋を渡り、住宅街を抜けて5分ほど歩いた場所にあります。こんな住宅街のただ中に小水力発電所があることに驚きです。

 

全国でも珍しい都市型小規模水力発電所を六甲川に設置したのは“NPO法人PVネット兵庫グローバルサービス”。2013年設立の同グループが目指すのは“市民レベルでの脱炭素地域づくりと地域資源の有効活用”です。

発電所の立地する“水車新田”の地域は、その名前の由来にもある通り江戸から大正時代には、菜種油の搾油や酒米の米つきのために多くの水車が稼働していました。この水車跡地を発電所として復活させようとの構想からNPOの皆さんのチャレンジが始まっています。

総工費は6,300万円。有効落差27m、最大使用水量0.11㌧、最大出力は19.9kwです。FIT認定で売電する発電量は、年間12万6,000kwhを見込んでいます。しかし、後述する取水に課題があるため想定ほどの発電ができず、売電収入も思ったほど得られていないとのことです。

発電所の説明をしてくださったNPOのメンバーで、施工会社でもある“株式会社みつば電気”会長の岡本さんは「投資回収できるかどうかギリギリのところで奮闘している」とのことでした。説明する岡本さんからは、あふれる熱意が伝わってきます。

発電所にもコスト削減の工夫が見て取れます。発電機は、ポンプと同じ部品を使うことができるため比較的安価なポンプ逆転水車を使用。

発電機を格納する建屋はなく、屋根と柵の簡易な施設に水車発電機や制御盤が設置されています。

発電機設置後も苦労があったそうです。発電所から放水される水の音が大きいとの苦情が近隣住民から寄せられました。この課題に対しては、発電所を数カ月停止し、放水音が出ないようにする騒音対策のための追加工事を行ったそうです。こういった騒音問題は住宅地ならではの課題だと感じました。

導水路は森の中を縫うように延びています。森のあちこちには鳥やミツバチの巣箱が設置されています。こういった森づくりの取組からは、NPOメンバーの方が熱心に地域づくりに取り組まれていることが伺えます。売電収益は、こういった地域の環境保全や発電所の維持管理に役立てられているようです。

 

取水は砂防ダムから流れ落ちた水が溜まった滝つぼからのサイフォン方式です。この取水方式では、河川流量が少ない季節に取水し続けると滝つぼの水が少なくなってしまいます。なぜなら、滝つぼに供給される水の量よりも発電に利用される水の量のほうが多くなる場合があるからです。つまり、滝つぼの水を流量以上に取りすぎてしまうのです。

こういった事情から河川流量が少ない時期の発電機は、停止と起動を繰り返す間歇(かんけつ)運転をしています。これが想定ほどの発電量が得られない大きな原因になっているのです。

とはいえ、運転起動時は、有効落差に見合った流量を取水することになるので、ほぼ定格出力で発電しているそうです。低出力で連続運転するよりも間歇運転のほうがトータルの発電量は増えるということです。

今回、現地で私たちを案内してくださったNPOメンバーの方々は、みなさん意欲的に小水力発電を活かした地域づくりに熱心に取り組んでおられました。事業主体がNPOということもあり十分な資金を用意できない中で、様々な工夫やアイデアで乗り越えてこられたように見受けられました。

小水力発電は地域や環境を良くするための手段であると感じさせて頂けた学びの多い事例でした。

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○黒土川発電所レポート  (運営委員:一樋和美さん)

7月22日(土)に関西協議会として、この春から稼働した兵庫県宍粟(しそう)市千種(ちくさ)町にある「黒土川発電所」の見学会に参加してきました。

全体では25人乗りのバス一台定員いっぱい、と神戸市六甲川発電所のみ現地に直接行かれた方1名の参加でした。

JR京都駅から出発し、途中阪急六甲駅で集合していたメンバーを乗せ、午前中に六甲川発電所を見学後、車内でお弁当を食べながら宍粟市に向かいました。

道中で参加者の自己紹介なども行われ、協議会として久しぶりのツアー再開で、みなさんとても期待されている感じでした。

バスは中国道山崎インターから下道を約50分走り、道の駅ちくさで2回目のトイレ休憩でしたが、夏休みの関係もあり道の駅は大変賑わっており、道路脇の千種川では遊泳などの川遊びをされる若い家族連れなどもいるようでした。(ちなみに千種川は、河口まで大きなダムがなく本州に残された数少ない清流の一つ、と言われています。河口は播州赤穂)

そこから支流の黒土川に沿って急な坂道(一応県道)を登り、地元の名所となっている滝横辺りまで一旦バスで移動しました。

そのあと、設立に向けて奮闘なされた地元の有志(黒土川小水力発電合同会社社員)からの案内で、取水口〜発電所建屋(〜バス乗車地点)まで1.5kmほどを徒歩で見学しました。

黒土川の水量は、数日前までの雨で少し水量が多いだろうとのことでしたが、設置された堰堤などにも支障はなく、ほぼ期待した通りの水量を配管に流すことができている、とのことでした。

私が特に関心を持っていたところは取水口で、「コアンダ式」の取水方法が、全国で初めて?の事例として採用されているとのことでした。

その網目となる「スクリーン」は0.6mm以下の砂塵しか通さない、という優れものだったと思います。

発電所建屋に設置された水車発電機はオーストリア製で、合同会社を一緒に設立された、E-SERECTさんの提案とのことでした。

横軸2射ペルトン水車、水量0.1立米/秒、有効落差50.1m、出力規模は39.6kW(最大)で全て売電とのことです。

この売電による収益は、地元黒土地域(自治会)活動資金として活用し、地域の小学生をはじめとする環境教育などにも活用したい、とのことでした。

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設置の構想を持ってから7〜8年経つとのことですが、その間に地元住民の合意、資金の確保、水利権のクリアなど様々な苦労を乗り越えられて実現されたことは、ここでは語り尽くせないものだろうと思います。今後機会があればゆっくりと、盃を傾けながら拝聴して見たいと思っています。

(従前より、少し宍粟市との様々な交流があった者からの報告でした(笑))

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 長い時間をかけて計画して、何度も難題にぶちあたり、その都度、課題をクリアしてきた2つの発電所です。無事、発電所建設が完成しても、常時運転稼働するには、毎日の見守りが必要です。造るまでの苦労とはまた違う努力を重ねている2つの発電所でした。

 最後に、この2つの発電所は、両方ともに兵庫県の「地域創生!再エネ発掘プロジェクト」の支援(補助金、無利子貸付)を受けています。たとえ低圧連系規模でも、地域住民・市民の力だけでは及ばないところを、兵庫県では小水力のみならず再エネ全体に支援を続けています。こうしたバックアップが大きく好影響している事も申し添えておきます。

 次の見学ツアーは、秋、9/30-10/1、岐阜県高山方面を予定しています。ご関心のある方は、下記、当協議会の方へお問い合わせをお願いします。

       関西広域小水力利用推進協議会メルアド=info@kansai-water.net

協議会専用携帯電話=080-7051-5830(里中)